抗血液樹状細胞抗原(BDCA2)抗体であるlitifilimabは、形質細胞様樹状細胞のみに発現するBDCA2に結合し、全身性エリテマトーデス(SLE)の病因との関与が指摘されるI型インターフェロンなどの産生を抑制する。米・Northwell HealthのRichard A. Furie氏らは、litifilimabの第Ⅱ相臨床試験LILACを実施。SLE患者においてlitifilimabはプラセボ群に比べ腫脹関節数および圧痛関節数を有意に減少させたことを、N Engl J Med(2022; 387: 894-904)に発表した。
活動性の皮膚疾患と関節炎を有する成人SLE患者が対象
LILAC試験は、litifilimabの有効性・安全性を検討する二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験でパートAとBの2部から成る。パートBでは全身症状の有無にかかわらず皮膚エリテマトーデス患者を対象に、同薬投与により皮膚疾患活動性が有意に低下したことが既に報告されている(N Engl J Med 2022; 387: 321-331)。
今回のパートAは、最初の試験デザインでは、活動性の皮膚疾患を有するSLE患者をlitifilimab 50mg、150mg、450mgを0、2、4、8、12、16、20週目に皮下投与する群とプラセボ群にランダムに割り付け、12週時点におけるCLASI-Aスコアのベースラインからの変化を主要評価項目としていた。その後、活動性の皮膚疾患に加えて関節炎を有する成人SLE患者を対象とし、litifilimab 450mgを皮下投与する群とプラセボ群にランダムに割り付けるデザインに変更した。
変更後の主要評価項目は、24週時点における28関節中の活動性関節数(腫脹関節数と圧痛関節数の合計)のベースラインからの変化量とした。副次評価項目は、24週時点におけるCLASI-Aスコアがベースラインから50%以上低下した割合(CLASI-50)、12、16、24週時点におけるCLASI-Aスコアのベースラインからの変化率、24週時点におけるCLASI-Aスコアのベースラインから4点以上または7点以上低下などとした。
450mg投与で24週間にわたり腫脹関節数、圧痛関節数が減少
334例の適格性を評価し132例を登録。そのうち64例をlitifilimab 450mg群、56例をプラセボ群に割り付けた。
主要評価項目の解析対象は、litifilimab 450mgまたはプラセボの投与を受け、ベースライン時に圧痛関節数が4以上および腫脹関節数が4以上でベースライン時およびベースライン後に最低1回関節数を評価した102例とした。
検討の結果、活動性関節数の平均(±標準偏差)は、ベースライン時でlitifilimab群19.0±8.4、プラセボ群21.6±8.5 、24週時点のベースラインからの変化量の最小二乗平均値(±標準偏差)は、それぞれ−15.0±1.2、-11.6±1.3で、最小二乗平均差は-3.4(95%CI -6.7~-0.2、P=0.04)とlitifilimab群で有意に減少した。
副次評価項目については、大部分が両群の最小二乗平均差の95%CIが0をまたいでいたため、主要評価項目の解析結果をサポートしなかった。
安全性に関して、litifilimabは総じて良好な忍容性を示し、報告された有害事象のほとんどは軽度または中等度と評価された。ウイルス感染がlitifilimab群で7例、プラセボ群で4例に発現した。重篤な有害事象はlitifilimab群で4例、プラセボ群で6例に認められ、死亡はプラセボ群の3例のみだった。
今後はより大規模かつ長期的な試験で評価を
以上から、Furie氏らは「活動性の皮膚疾患および関節炎を有するSLE患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験において、litifilimabは450mgの用量で腫脹関節数および圧痛関節数を24週間にわたり減少させ、ベースラインからの減少幅がプラセボよりも有意に大きかった」と結論。「SLE治療におけるlitifilimabの安全性と有効性を判断するには、より長期かつ大規模な試験が必要である」と述べている。
(宇佐美陽子)