白血球数の上昇と心筋梗塞(MI)、脳卒中、心血管疾患(CVD)との関連が指摘される中、国立循環器病研究センター健診部のAhmed Arafa氏および同部特任部長の小久保喜弘氏らは大阪府吹田市の住民コホートを対象とした吹田研究のデータを用い、白血球数と心房細動(AF)リスクとの関連を検討。結果をCirc J(2022年10月25日オンライン版)に報告した。
白血球数が最も多い群でAFリスク1.57倍
多くのデータから白血球数とAFとの正の相関が示されてきた一方、有意な関連は認められなかったとの報告がある。また、アジア人では両者の関連についてあまり検討されていないという。そこでArafa氏らは、吹田研究のデータを用いて、白血球数の増加とAFリスクとの関連を検討した。
対象は、吹田研究に参加した30〜84歳の一般住民のうち、ベースライン時にAFの既往がなかった6,884例(男性3,238例)。白血球数が少ない順にQ1(対照)群(2,070〜4,310/μL、1,386例)、Q2群(同4,320〜5,010 /μL、1,362例)、Q3群(同5,020〜5,700/μL、1,380例)、Q4群(同5,710〜6,660/μL、1,381例)、Q5群(同6,670/μL以上、1,375例)の五分位に分類した。各群の平均年齢は54.8歳(Q5群)〜56.5歳(Q3群)だった。
平均14.6年の追跡期間中に312例がAFと診断された。Cox比例ハザードモデルを用いて、対照群に対する各群のAFリスクを求めた。その結果、性、年齢、BMI、喫煙、飲酒、身体活動、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病などを補正したハザード比(HR)は、Q2群が0.95(95%CI 0.63〜1.43)、Q3群が1.10(同0.76〜1.62)、Q4群が1.18(同0.80〜1.73)、Q5群が1.57(同1.07〜2.29)と、白血球数が最も多い群でのみAFリスクの有意な上昇が認められた。また、白血球数が1,000/μL増加するごとに、AFリスクは12%上昇することが分かった。
喫煙者ではAFリスクより上昇
次に、非喫煙者および喫煙者に分けて同様に検討した。その結果、非喫煙者では対照群に対するAFリスクは、Q2群がHR 1.58(95%CI 0.98〜2.55)、Q3群が同1.28(0.79〜2.06)、Q4群が同1.11(0.68〜1.82)、Q5群が同1.61(1.01〜2.57)で、白血球数が最も多い群でのみAFリスクは有意に上昇した。一方、喫煙者ではいずれの群でもリスクの有意な上昇が示された〔Q2群:HR 3.51(95%CI 1.45〜8.51)、Q3群:同3.92(1.61〜9.56)、Q4群:同5.31(2.21〜12.72)、Q5群:同4.66(1.89〜11.50)〕。さらに、男女別での検討においても、非喫煙者に比べ喫煙者でAFリスクはより高かった。
以上から、Arafa氏らは「アジア人を対象に初めて白血球数とAFリスクとの関連を検討した本研究により、白血球数が多いとAFリスクが上昇することが示唆された」と結論。AF発生件数が少なかったことなど研究の限界にも触れつつ、「白血球数がAFの高リスク者を検出するバイオマーカーとなりうるだろう。今後さらなる検証が必要」との見解を示している。
(編集部)