米・University of Connecticut School of MedicineのTaeho Greg Rhee氏らは、大うつ病性障害(MDD)患者における麻酔薬ケタミンと電気痙攣療法(ECT)の有効性と安全性を比較する目的で、6件の試験についてシステマチックレビューとメタ解析を実施。急性期の抑うつ症状の重症度の改善効果はケタミンと比べてECTが優れ、それぞれ独自の有害事象プロファイルを有することが示されたことをJAMA Psychiatry2022年10月19日オンライン版)に報告した。

認知/記憶、重篤な有害事象に差はなし

 解析の対象となったのは6件の試験に参加した340例(平均年齢の範囲37.6~52.5歳、ケタミン群178例、ECT群162例)で、5件はランダム化比較試験だった。いずれもECTが適格の入院患者で2件は欧州、4件はアジアおよび中東で実施された。抑うつ症状の重症度改善の評価には、Hedges' gの標準化平均差(SMD)が使用された。

 抑うつ症状の3つの評価法のいずれにおいても、ECT群がケタミン群よりも症状の改善効果が優れていた〔Montgomery-Åsbergうつ病評価尺度(MADRS):SMD −0.59、95%CI −0.85〜−0.33、Hamiltonうつ病評価尺度(HDRS):同−0.83、−1.22〜−0.44、Beck抑うつ質問票(BDI):同−0.86、−1.50〜−0.22〕。

 抑うつ症状に関する全体の統合解析では、ケタミン群と比べたECT群のSMDは-0.69(95%CI -0.89~-0.48、Cochran's Q P=0.15、I 2=39%)であり、ECT群で症状の改善効果が高いことが示唆された。

 転帰として神経認知能力の評価を行ったのは1試験のみで、ケタミン群がECT群に比べ良好だったが、効果は限定的だった(Cohen's d 0.40、P=0.04)。Wechsler記憶尺度を用いて記憶力を評価した1試験では、両群間に差はなかった。

 また、自殺企図や自殺死などの重篤な有害事象を評価したのは1試験のみで、ケタミン群が91例中14例、ECT群は90例中23例で発生し、両群間で有意な差は認められなかった(P=0.09)。

患者中心の個別化治療が重要

 2つの治療群はそれぞれ独自の有害事象プロファイルを示した。ECT群と比べてケタミン群では頭痛〔相対リスク(RR)0.37、95%CI 0.18〜0.76〕および筋肉痛(同0.23、95%CI0.13〜0.38)のリスクが低かった。

 これに対し、ケタミン群と比べてECT群ではかすみ目(RR26.47、3.62〜193.67)、めまい(同2.99、2.03〜4.40)、複視/眼振(同10.88、3.52〜33.63)、一過性の解離/離人症状(同5.04、3.03〜8.36)のリスクが低かった。

 Rhee氏らは、「MDD患者において、ECTはケタミンよりも症状の改善に有効な可能性が示唆された。ただし、有害事象プロファイルの違いや患者の好みを考慮して、治療選択肢は患者中心の観点から決定すべき」と結論した。

(菅野 守)