小児がんの神経芽腫(がしゅ)のうち治りにくいタイプは、がん細胞が異常な増殖を続けるために必要な栄養分である3種類のアミノ酸の調達を妨げる戦略が治療に有効だと、東京大医学部付属病院の渡辺健太郎助教や京都大大学院医学研究科の滝田順子教授らが2日までに発表した。アミノ酸の生産や取り込みを薬剤で抑えるマウス実験などの成果で、論文は国際的ながん専門誌オンコジーンに掲載された。
がん細胞は免疫細胞からの攻撃を回避して増殖し続けるため、通常の細胞とは栄養分の利用方法が異なる。実験では医薬品としての安全性が確認されていない薬剤も使っており、早期の臨床応用は期待できない。しかし、渡辺助教は「既存の抗がん剤が効きにくい患者向けに、がん細胞の性質を逆手に取る方法が新治療法につながる可能性がある」と話している。
神経芽腫は副腎や背骨近くの交感神経節にできる。検査のため患者から採取された神経芽腫の細胞で染色体の異常や遺伝子の働きを調べたところ、既存の薬が効きにくいがん細胞ではアミノ酸のセリンが増産されていることが分かった。
神経芽腫のモデルマウスで薬剤を使ってセリンを生み出す遺伝子を抑えたほか、関連するアミノ酸のアルギニンやシスチンの取り込みも阻害したところ、高い治療効果があった。 (C)時事通信社
がん細胞の栄養調達を妨害=神経芽腫の新治療戦略―東大・京大
(2022/11/02 14:25)