びらん性食道炎に対する治療薬の主流は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)ランソプラゾールとされる。一方、より強力な酸分泌抑制作用を持つカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)ボノプラザンの、びらん性食道炎への有効性を示すデータは限られている。米・Yale School of MedicineのLoren Laine氏らは、びらん性食道炎患者が対象の二重盲検ランダム化比較試験(RCT)において、投与開始8週後の治癒率および24週後の治癒維持率に関して、ボノプラザンがランソプラゾールに非劣性を示したとGastroenterology(2022年10月10日オンライン版)に発表した。重症患者に対しては、ボノプラザンの優越性も認められたという。

成人びらん性食道炎患者1,024例を解析

 同試験は米国および欧州5カ国(ポーランド、チェコ、ハンガリー、ブルガリア、英国)で実施。解析対象は、内視鏡検査で確認された成人びらん性食道炎患者1,024例で、Helicobacter pyloriH. pylori)感染者とバレット食道患者は除外した。

 Laine氏らはまず、ロサンゼルス分類(LA分類)を用いて対象の逆流性食道炎の内視鏡的重症度を層別化(グレードA/BまたはC/D)し、治療期としてボノプラザン20mg群とランソプラゾール30mg群(いずれも1日1回、最大8週間投与)に1:1でランダムに割り付けた。さらに、維持期として8週後に内視鏡的治癒が確認された893例をボノプラザン10mg群、同20mg群、ランソプラゾール15mg群に1:1:1でランダムに割り付け、維持療法として24週間投与した。

内視鏡的治癒率は84.6% vs. 92.9%

 intention-to-treat(ITT)解析の結果、治療期の主要評価項目である投与開始8週後の内視鏡的治癒率は、ランソプラゾール30mg群の84.6%(510例)に対しボノプラザン20mg群では92.9%(514例)と非劣性が示された(P<0.0001)。事前に規定したサブグループ解析から、特にLA分類グレードC/Dの重症患者でボノプラザンのより高い治癒効果が認められた(91.7% vs. 72.0%)。

 また、副次評価項目である胸焼け症状のない平均日数においても、ランソプラゾール群に対するボノプラザン群の非劣性を示し(66.8日 vs. 64.1日)、重症患者における2週後の治癒率では優越性を示した(70.2% vs. 52.6%、P=0.0008) 。

維持期でも重症例でボノプラザンの優越性示す

 維持期の主要評価項目である24週後の内視鏡的治癒維持率は、ボノプラザン20mg群は80.7%(291例)、同10mg群は79.2%(293例)、ランソプラゾール15mg群は72.0%(294例)と、ボノプラザン群はともにランソプラゾール群に非劣性を示した(全てP<0.0001、ITT解析)。重症患者の治癒維持率は、ボノプラザン20mg群77.2%、同10mg群74.7%、ランソプラゾール群61.5%で、ボノプラザン群がともにランソプラゾール群に優越性を示した(順にP=0.020、P=0.049)。

 副次評価項目である胸焼け症状のない平均日数については、ランソプラゾール15mg群が80.6日、ボノプラザン20mg群が80.9日、同10mg群が78.6日と、非劣性が示された。

 以上の結果から、Laine氏らは欧米人以外の集団やH. pylori感染例などには一般化できないことに注意が必要としながらも、「H. pylori陰性のびらん性食道炎患者に対し、ボノプラザンは治癒率および治癒維持率においてランソプラゾールに対する非劣性を示した。特にボノプラザンの治癒効果はLA分類グレードC/Dの重症患者で高かった」と結論している。

(小谷明美)