オーストラリア・University of MelbourneのDavid Chieng氏らは、カプチーノやフィルターで濾過したコーヒーなど粉状にひいたコーヒー豆から抽出したコーヒー(グラウンドコーヒー)だけでなく、インスタントコーヒーやカフェインを除去したコーヒー(デカフェ)であっても、日常的に摂取する習慣がある人では全く飲まない人と比べて心血管疾患(CVD)や死亡のリスクが低かったとの研究結果を、Eur J Prev Cardiol2022年9月27日オンライン版)に報告した。

UK Biobank参加者約45万例を解析

 これまでの疫学研究から、コーヒーの摂取習慣がある人では不整脈やCVD、死亡のリスクが低いことが示されている。しかし、コーヒーの種類別に心血管転帰や死亡との関連を検討した研究は少なかった。

 Chieng氏らは今回、UK Biobank参加者のデータを用いて、3種類のコーヒー(①デカフェ、②グラウンドコーヒー、③インスタントコーヒー)の摂取と不整脈、CVD、死亡のリスクとの関連について検討した。

 民族的背景やコーヒーの摂取量および種類、茶の摂取量、BMI、喫煙、飲酒に関する回答がない参加者、ベースライン時に心房細動の申告があった参加者、UK Biobank登録時にCVDの診断がある参加者を除外し、44万9,563例を対象とした。年齢中央値は58歳〔四分位範囲(IQR)50~63歳〕、女性は55.3%、追跡期間中央値は12.5年(同11.7~13.2年)であった。

1日2~3杯の摂取でリスク低下度が最大に

 年齢、性、飲酒量、茶の摂取量、肥満糖尿病高血圧、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、喫煙を調整した解析の結果、コーヒーの摂取習慣がない対照群(10万510例、22.4%)と比べて、グラウンドコーヒーまたはインスタントコーヒーの1日1~5杯摂取する群では不整脈リスクの有意な低下が認められた。中でも不整脈のリスクが最も低かったのは、グラウンドコーヒーの1日4~5杯摂取群〔ハザード比(HR)0.83、95%CI 0.76~0.91、P<0.0001〕と、インスタントコーヒーの1日2~3杯摂取群(同 0.88、0.85~0.92、P<0.0001)であった。デカフェ摂取群では不整脈リスクの有意な低下は認められなかった。

 CVDと全死亡に関しては、種類を問わずコーヒーの摂取習慣がある群で対照群に対する有意なリスク低下が認められた。CVDと全死亡のリスクが最も低かったのは、3種類とも1日当たりの摂取量が2~3杯の群であった(CVD・デカフェ:HR 0.94、95%CI 0.90~0.99、P=0.0093、グラウンドコーヒー:同 0.80、0.77~0.84、P<0.0001、インスタントコーヒー:同0.91、0.88~0.94、P<0.0001、全死亡・デカフェ:同 0.86、0.81~0.91、P<0.0001、グラウンドコーヒー:同 0.73、0.69~0.78、P<0.0001、インスタントコーヒー:同0.89、0.86~0.93、P<0.0001)。

 以上から、Chieng氏らは「全ての種類のコーヒーについて、少量から中程度の量であれば、摂取をやめるよう指導すべきではない。むしろ、健康的な生活習慣の一部と見なすべき」と結論している。

(岬りり子)