近年、肥満糖尿病患者の増加に伴い、異所性脂肪蓄積による臓器障害が注目されている。通常は少量しか含まれない臓器内およびその周辺に脂肪が蓄積する異所性脂肪蓄積は膵臓でも確認されており(膵臓内脂肪沈着および脂肪膵臓疾患と呼ばれる)、脂肪膵臓疾患では糖尿病のリスクが高まることが知られている。大阪大学大学院内分泌・代謝内科学の仁木暁子氏らは、2型糖尿病患者における生活習慣因子(以下同)と膵臓内脂肪沈着との関連性を後ろ向き研究により検討。2型糖尿病患者においては、1日3食の食習慣と比べ1日2食では膵臓内脂肪沈着が有意に多いことを、BMJ Open Diabetes Res Care2022; 10: e002926)に発表した。

膵臓内脂肪沈着と肝異所性脂肪蓄積を腹部CT値から定量化

 対象は、2008年1月〜20年4月に大阪大学病院入院中に腹部CT検査を受けた2型糖尿病患者185例。生活習慣因子に関する情報として1日当たりの食事回数、間食習慣、運動習慣、職場での運動、喫煙習慣、アルコール摂取量を、さらに不眠症、睡眠時無呼吸症候群(SAS)、夜間勤務の有無、睡眠導入薬の使用の有無を自己記入式アンケートや問診、カルテから取得した。

 膵臓内脂肪沈着および肝異所性脂肪蓄積の程度を定量化するため、膵臓、肝臓、脾臓、内臓脂肪面積(VFA)をそれぞれ測定して平均CT値を算出。膵臓内脂肪沈着は平均膵臓CT値(P)と脾臓CT値(S)の差とし(P-S)、肝異所性脂肪蓄積は平均肝臓CT値(L)と脾臓CT値の差とした(L-S)。

1日当たりの食事回数以外の生活習慣因子は関連せず

 対象の患者背景は、年齢中央値63.0歳、BMI中央値26.5、HbA1c中央値8.9%、1日当たりの食事回数は2回が22例(13.3%)、3回は143例。食習慣が1日2回の22例のうち、14例は朝食抜き、5例は昼食抜き、2例は夕食抜き、1例は18時と0時に食事を取っていた。

 生活習慣因子と膵臓内脂肪沈着との関連では、食習慣が1日3回の群と比べて1日2回の群では年齢、性、HbA1c、BMIを調整後のP-Sが有意に低い(P=0.02)、すなわち膵臓内脂肪沈着が有意に多かった。一方、その他の生活習慣因子と膵臓内脂肪沈着との間に有意な関連は見られなかった。

肝異所性脂肪蓄積と内臓脂肪面積は生活習慣因子と関連せず

 生活習慣因子と肝異所性脂肪蓄積との関連については、SASを有さない群と比べて有する群では年齢、性、HbA1cを調整後のL-Sが有意に低く、肝異所性脂肪蓄積が有意に多かった(P=0.008)。この関連はさらにBMIを調整すると弱まった(P=0.34)。

 一方、食事回数などその他の生活習慣因子と肝異所性脂肪蓄積との間に有意な関連は見られなかった。

 生活習慣因子とVFAとの関連では年齢、性、HbA1cを調整後、定期的な運動を行わなかった群、SASを有する群は、それぞれ行った群および有さない群よりもVFAと有意に関連したが、この関連はさらにBMIを調整するといずれも消失した。食事回数などその他の生活習慣因子とVFAとの間に有意な関連は見られなかった。

 この結果について、仁木氏らは「非アルコール性脂肪肝の発症と密接に関連することが知られている肥満と膵臓内脂肪沈着に関係がないという、興味深い知見が示唆された」と述べている。

現在の糖尿病診療ガイドラインを支持する結果

 以上を踏まえ、仁木氏らは「1日2食の2型糖尿病患者は、年齢、性、HbA1c、BMIを調整後も、1日3食の患者より膵臓内脂肪沈着が多いことが分かった。現在の糖尿病診療ガイドラインでは、食事を抜くことは血糖コントロールを悪化させ、動脈硬化のリスクを高めるため推奨されていない。今回の結果はこの推奨を支持している。この知見に基づく今後の研究は、膵臓内脂肪沈着に焦点を当てた糖尿病治療への新しいアプローチにつながる可能性がある」と述べている。

(宇佐美陽子)