脂質降下薬や糖尿病治療薬の常用により、加齢黄斑変性(AMD)の罹患リスクが低下することが分かった。ドイツ・University Hospital BonnのMatthias M. Mauschitz氏らは、3万8,000例を含む14研究のメタ解析を行った結果をBr J Ophthalmol2022年11月7日オンライン版)に報告した。(関連記事「加齢性の眼疾患、血糖降下薬でリスク低下」「レボドパで加齢黄斑変性の視力が改善」)

糖尿病治療薬でリスクが最も低下

 AMDは加齢に伴う遺伝的、環境的危険因子が関連する多因子疾患で、高所得国の特に55歳以上における重度の視覚障害および失明の主要な原因である。欧州では現在6,700万人がAMDに罹患しており、2050年までに罹患率が15%上昇すると予測されている。これまでの研究で、脂質降下薬や糖尿病治療薬がAMDリスクを低下させる可能性が示唆されているが、症例数が少なく、一貫した結果は得られていない。そこでMauschitz氏らは、14研究・3万8,000例が対象のメタ解析を行い、全身治療薬とAMDの関係を検討した。

 European Eye Epidemiology Consortiumが行ったフランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ノルウェー、ポルトガル、ロシア、英国における住民ベースまたは病院ベースの研究14件に参加した50歳以上の3万8,694例を対象にメタ解析を実施。脂質低下薬、糖尿病治療薬(インスリンを含む)、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、レボドパなどの全身治療薬の常用とAMD(早期および後期AMD)または後期AMDとの関係を検討した。

 対象の平均年齢は61.5~82.6歳、AMD罹患者は9,332例で罹患率は12.1~64.5%、そのうち後期AMD罹患者は951例で罹患率は0.5~35.5%だった。

 多重ロジスティック回帰分析モデルを用いて年齢、性、喫煙状況、高血圧糖尿病などの交絡因子を調整後、脂質低下薬の常用〔オッズ比(OR)0.85、95%CI 0.79~0.91、P<0.001、 I2=0%〕、糖尿病治療薬の常用(同0.78、0.66~ 0.91、P=0.002、 I2=57%)とAMDリスク低下の有意な関連が示された。両薬以外の薬剤との関連は認められず、後期AMDとの関連もなかった。

 同氏らは、「さまざまな住民ベース、病院ベースの研究から得た個人データを使用した大規模プールデータ解析は今回が初めてだ。横断的データに限られているため、得られた知見を確認するには縦断的データを解析する必要がある」と研究の限界を強調。「ただし、AMD発症において代謝過程が重要な役割を担っていることが示され、新たな治療法や公衆衛生上の施策にも影響を及ぼす可能性がある」と指摘している。以上を踏まえ、同氏らは「脂質低下薬や糖尿病治療薬の常用は、一般集団においてAMD罹患率を減少させることが示唆された。これらの薬剤がAMDに関連する病態生理学的経路を阻害する可能性があることから、AMDの病因解明に寄与するかもしれない」と結論している。

(編集部)