台湾・Changhua Christian HospitalのPei Ju Huang氏らは、同国の国民健康保険研究データベースを用いてシェーグレン症候群(SS)患者5,751例および条件を一致させた対照群2万8,755例を対象にした後ろ向き症例対照研究を実施。その結果、帯状疱疹の既往歴とSS発症リスクとの間に有意な関連が認められ、特に併存疾患がない者でリスクが高かったとBMJ Open2022; 12: e061962)に発表した。

オッズ比、併存疾患なし2.24 vs. あり1.71

 Huang氏らはまず、台湾の国民健康保険研究データベースから関節リウマチまたは全身性エリテマトーデスの既往歴がなく2007~12年に新規にSSと診断された5,751例(SS診断時の平均年齢55歳、女性87.8%)を特定した。次に、SS群とSS診断年、年齢、性でマッチングした結合組織疾患(CTD)の既往歴がない非SS患者を1:5でランダムに選出し対照群(2万8,775例)とした。

 条件付きロジスティック回帰モデルによる解析の結果、帯状疱疹の既往歴がある者でSS発症リスクの有意な上昇が認められ、オッズ比(OR)はCTDを除く併存疾患のCharlson Comorbidity Index(CCI)で調整したモデルAで1.89(95%CI 1.71~2.08)、CTD以外の併存疾患で調整したモデルBで1.90(同1.72~2.10)だった。

 SS発症リスクは帯状疱疹関連の最終診察日から初発SS診断日までの間隔が3カ月未満の場合に最も高く、ORはモデルAで3.09(95%CI 2.20~4.34)、モデルBで3.13(同2.20~4.45)だった。

 サブグループ解析では、CCI 1以上の併存疾患がある者(OR 1.71、95%CI 1.21~2.41)と比べ、CCI 0の併存疾患がない者(同2.24、1.77~2.82)でSS発症リスクが有意に高かった(P<0.001)。

 帯状疱疹とSSの関連について、同氏らは「水痘帯状疱疹ウイルス感染によって持続的にB細胞が活性化され、遺伝的感受性を有する者におけるSS発症につながった可能性がある」との見解を示している。

糖尿病患者ではリスク低下、メトホルミンが関与か

 一方、SS発症リスクは帯状疱疹の既往歴がある糖尿病患者(モデルBのOR 0.62、95%CI 0.55~0.70)、がん患者(同0.18、0.13~0.26)では有意に低下した。

 糖尿病患者におけるSS発症リスク低下について、Huang氏らは「2型糖尿病に対する第一選択薬とされているメトホルミンが、その抗炎症作用によりSS発症リスクを低下させた可能性がある。また、メトホルミンは免疫調節機能を高めることからSSの有効な治療薬になると考えられている」と説明している。

(太田敦子)