英・University College LondonのSara E. Miniawi氏らは、統合失調症や統合失調感情障害などの非感情性精神病性障害と認知症との関連を検討した1,300万例弱を含む13研究を対象にシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、統合失調症などを有する者は有さない者と比べて、認知症の発症リスクが2.5倍だったとPsychol Med2022; 6: 1-13)に発表した。

精神病患者で認知症の診断年齢が低下傾向

 Miniawi氏らは今回、4種類の医学データベース(MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHL Plus)と2種類の灰色文献データベース(Open Grey、EThOS)を用い、2021年6月29日までに発表された非感情性精神病性障害と認知症の関連を検討した研究を検索。前向き研究3件と後ろ向き研究10件の計13件・1,299万7,101例(うち精神病性障害患者11万9,274例、追跡期間の中央値11年、範囲1.57~33年)を抽出し解析対象とした。

 ランダム効果メタ解析の結果、非感情性精神病性障害を有する者は有さない者と比べて認知症の発症リスクが2.52倍だった〔プールした相対リスク(RR)2.52、95%CI 1.67~3.80、P<0.001、I2=99.7%、研究間の異質性は高い〕。

 認知症リスクの上昇は精神病性障害の種類や初発年齢を問わず認められた。ただし、最遅発性(60歳以降発症)の精神病性障害患者(プールしたRR 2.77、95%CI 1.74~4.40、P<0.001、I2=98.9%)と比べ、通常発症型(40歳未満発症)および遅発性(40歳以降発症)の精神病性障害患者でさらにリスクが高かった(同3.10、2.33~4.14、P=0.004、I2=77.5%)。

 また、精神病性障害を有する者は有さない者と比べ認知症の発症年齢が低かった。ある研究では、65歳未満で認知症と診断された割合が非統合失調症患者の6.3%に対し統合失調症患者では22.4%だった。別の研究では、66歳の統合失調症患者における認知症の有病率は一般人口の88歳における有病率と同等だった。

 これらの結果について、Miniawi氏らは「非感情性精神病性障害は認知症の修正可能な危険因子である可能性があり、有病者は高齢期に認知機能低下のモニタリングを慎重に行う必要があることが示された」と結論している。

併存疾患と抗精神病薬の研究結果は一貫せず

 一方、併存疾患について検討した研究は2件と少なく、結果が一貫していなかった。1件の研究では、認知症リスクは心血管疾患を併発する統合失調症患者(ハザード比4.27、95%CI 3.64~4.99)で非併発例(同2.36、1.45~3.87)より高かった(P<0.001)。糖尿病高血圧パーキンソン病頭部外傷アルコール関連障害を併発する統合失調症患者も非併発例と比べて認知症リスクが高かった(全てP<0.05)。

 しかし、もう一方の研究では糖尿病虚血性心疾患、うっ血性心不全心房細動、末梢血管疾患の有無による認知症リスクの差は認められず、脳血管疾患を併発する統合失調症患者(発生率比1.71、95%CI 1.47~2.00)で非併発例(同2.23、2.08~2.39)に比べ認知症リスクが低かった(P=0.002)。

 同様に、抗精神病薬について検討した1件の研究では、第一世代と第二世代の抗精神病薬ともに、非使用者と比べて使用者の精神病性障害患者で認知症リスクが低かった。別の研究では、第一世代の抗精神病薬でリスク低下が見られたが、第二世代の抗精神病薬ではリスクが上昇した。

 Miniawi氏らは「これらの相反する結果は今後の重要な検討課題」と位置付け、「今後の研究で、精神病性障害と認知症を関連付けるメカニズムについて検討する必要がある」と付言している。

(太田敦子)