中国・University of Hong KongのMan-Fung Yuen氏らは、慢性B型肝炎患者457例を対象にB型肝炎ウイルス(HBV)のmRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドbepirovirsenの有効性と安全性を第Ⅱb相プラセボ対照ランダム化比較試験で検討。その結果、bepirovirsen 300mg週1回24週間皮下投与により、ヌクレオシド/ヌクレオチド類似体(NA)併用例の9%、非併用例の10%でB型肝炎表面抗原(HBsAg)およびHBV DNAの持続的な消失が認められたとN Engl J Med2022年11月8日オンライン版)に発表した。

HBsAgとHBV DNAの消失が治療後24週間持続

 同試験では、22カ国123施設において慢性B型肝炎と診断され、NA投与中の227例と非投与の230例の計457例を登録。それぞれ週1回の皮下注射で、①bepirovirsen 300mgを24週間投与する第1群、②bepirovirsen 300mgを12週間投与後に同薬150mgを12週間投与する第2群、③bepirovirsen 300mgを12週間投与後にプラセボを12週間投与する第3群、④プラセボを12週間投与後にbepirovirsen 300mgを12週間投与する第4群-に3:3:3:1でランダムに割り付けて治療した。

 主要評価項目は、新規の抗ウイルス薬投与なしでのbepirovirsen投与終了後24週間にわたる持続的なHBsAg値の検出限界(0.05IU/mL)未満への低下およびHBV DNA値の定量限界(20IU/mL)未満への低下の複合とした。

 解析の結果、NA併用例における主要評価項目の達成率は第1群で68例中6例〔効果の点推定9%、95%確信区間(CrI)0~31%〕、第2群で68例中6例(同9%、0~43%)、第3群で68例中2例(同3%、0~16%)、第4群で23例中0例(同2%、post-hoc CrI 0~8%)だった。

 非NA併用例における達成率は第1群で70例中7例(効果の点推定10%、95%CrI 0~38%)、第2群で68例中4例(同6%、0~25%)、第3群で68例中1例(同2%、post-hoc CrI 0~6%)、第4群で24例中0例(同2%、0~8%)だった。

 なお安全性の評価では、プラセボとbepirovirsenの比較が可能だった1~12週において、注射部位反応、発熱、疲労感、ALT上昇などの発現率がプラセボ投与の第4群に比べてbepirovirsen投与の第1~第3群で高かった。

ベースラインHBsAg低値で効果予測の可能性

 以上の結果から、Yuen氏らは「bepirovirsen 300mg週1回24週間投与により、慢性B型肝炎患者の9~10%において投与終了後24週間にわたる持続的なHBsAgおよびHBV DNAの消失が認められ、NA併用の有無による差はなかった」と結論。HBsAg消失の達成率が極めて低い他の治療薬との成績の違いについて、「Toll様受容体(TLR)8を介して発揮されるbepirovirsenの免疫刺激作用が関与している可能性がある」と考察している。

 また、第1群における主要評価項目の達成率は、ベースラインのHBsAg値が3 log10 IU/mL超の高値例(NA併用例6%、非NA併用例7%)に比べて3 log10 IU/mL以下の低値例(同16%、25%)で高かったことから、同氏らは「ベースラインのHBsAg値が治療効果の予測因子になる可能性が示唆された」としている。

(太田敦子)