膠原病に伴う間質性肺疾患(CTD-ILD)の治療において、既存の免疫抑制薬シクロホスファミドと抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブの有効性と安全性をHead-to-headで比較した第Ⅱ相二重盲検ダブルダミーランダム化比較試験(RCT)RECIAL。米・University of Southern CaliforniaのToby M.Maher氏らは、主要評価項目であるベースラインから24週後の努力肺活量(FVC)の変化量で優越性を示せなかったものの、各種健康関連QOL値を改善し、有害事象が少なかったとの結果を、Lancet Respir Med(2022年11月11日オンライン版)に発表した。

英国の11施設・101例が対象

 CTD-ILDの治療には、シクロホスファミドによる免疫抑制療法が広く用いられている。しかし、性腺機能不全や尿路上皮悪性腫瘍のリスクが高まるなど毒性が強いことから、レスキュー療法としてリツキシマブが適応外使用されるケースも少なくない。そこでMaher氏らは今回、重症または進行性のCTD-ILD患者を対象に、シクロホスファミドに対するリツキシマブの優越性を検証する初のRCTとしてRECITALを実施した。

 対象は、2014年12月~20年3月に英国の11施設で登録した18~80歳の全身性強皮症、特発性炎症性筋炎、混合性CTDに関連する重症または進行性のCTD-ILD患者101例。リツキシマブ群(51例)とシクロホスファミド群(50例)にランダムに割り付け、48週間追跡した。

 リツキシマブ群は、1000mgを0日目および14日目に静脈内投与し、プラセボを4~20週目に4週間隔で投与した。一方、シクロホスファミド群は600mg/m2(体表面積)を0~20週目まで4週間隔で投与し、14日目のみプラセボを投与した。

24週後のFVC平均変化量に両群で有意差なし

 主要評価項目は、24週後におけるFVCのベースラインからの変化量とした。副次評価項目は、48週後におけるFVCのベースラインからの変化量、6分間歩行距離(6MD)、一酸化炭素肺拡散能(DLCO)、医師による包括的疾患活動性(GDA)評価スコア、St. George's 呼吸質問票(SGRQ)、King's 簡易間質性肺疾患(K-BILD)質問票およびEuropean Quality of Life Five-Dimension(EQ-5D)質問票に基づくQOL、全生存(OS)、無増悪生存(PFS)、治療失敗(移植または非盲検下でのシクロホスファミド/リツキシマブによるレスキュー療法を要した場合と定義)までの期間、ステロイド使用量とした。

 解析の結果、24週間後におけるFVCのベースラインからの平均変化量±標準偏差(未調整)は、シクロホスファミド群99±329mL、リツキシマブ群97±234mLといずれも改善が見られた。年齢や性、ベースライン時のFVCを調整した混合効果モデルでは、両群に有意差は認められなかった(群間差-40mL、95%CI -153~74mL、P=0.493)。

有害事象の報告数はリツキシマブ群で少ない

 副次評価項目は、リツキシマブ群と比べてシクロホスファミド群で有意に優れていたGDAスコアの変化(群間差0.90ポイント、P=0.025)を除き、いずれの評価項目も有意差はなかった。ただし、24週後および48週後のQOL値は両群ともに改善が認められた。また、試験期間中の患者1人当たりのステロイド平均総投与量は、シクロホスファミド群と比べてリツキシマブ群で大幅に少なく(1万1,469mg vs. 1万3,291mg)、1日当たり12.3%減少していた(37.6mg vs. 42.9mg)。

 Cox比例ハザードモデルを用いて調整ハザード比(HR)を算出したところ、OS〔ハザード比(HR) 1.72、95%CI 0.31~9.56、P=0.534〕、PFS(同1.11、0.63-1.99、P=0.715)、治療失敗までの期間(同1.25、0.34-4.65、P=0.742)に両群で有意差は認められなかった。有害事象は全例で1つ以上が報告されたが、報告数はリツキシマブ群で大幅に少なかった(445件 vs. 646件)。

 Maher氏らは「今回のRCTにおいて、シクロホスファミドに対するリツキシマブの優越性を示すことはできなかったが、両群で24週後のFVCが増加し、QOLの改善も認められた。リツキシマブ群では有害事象の報告数が少なく忍容性が高かったことから、静脈内投与を必要とするCTD-ILD患者において、シクロホスファミドの代替薬になりうる」と結論した。

(小谷明美)