日本専門医機構理事長の渡辺毅氏は昨日(11月21日)開いた記者会見で、来年度(2023年度)の専攻医募集におけるシーリング(採用数の上限設定)案などについて説明。案には、シーリング対象となった都道府県の診療科と医師充足率が低い都道府県の診療科が特別地域連携プログラムを設けた場合、そのプログラムの専攻医は既存のシーリングの枠外として扱うなどといった措置が含まれているとし、厚生労働省からの意見書も踏まえ実現に向けて検討していることを明らかにした。
足下医師充足率0.7以下の都道府県を連携先に想定
日本専門医機構では、これまで専攻医募集の際に設けてきたシーリングについて、都市部周辺で専攻医が増加する効果が現れているものの、医師不足の東北地方などでは医師の偏在を是正する効果が限定的であると指摘。そこで、シーリングの対象となっている都市圏と、足下医師充足率(2018年時点の足下医師数÷2024年の必要医師数)が低い都道府県との連携(研修)プログラムをシーリングの枠外として別途設ける方策などを考案し、厚労省に示した(図)。
図. 2023年度専攻医募集におけるシーリング(案)の基本的な考え方
(令和4年度第1回医道審議会医師分科会医師専門研修部会)
渡辺氏によると、この案に対する厚労省からの意見書では、「単なるシーリングの緩和とならないよう十分に配慮するため、足下医師充足率が原則0.7以下(小児科については0.8以下)の都道府県のうち、医師少数区域にある施設を連携先とするものに限り、既存のシーリングの枠外として設置可能にすること」との回答があったという。
またこの条件を満たし、医師の超過勤務を是正する措置が図られてもなお、年通算の時間外・休日労働時間が1,860時間を超える、または超える恐れがある医師が所属するなどの状況にある施設が該当するといった意見も出された。
さらに意見書では、シーリングに関する提案として同機構が提示した、子育て世代の支援を重点的に行っている(育児と仕事を両立できる職場環境が整っている医療機関で研修を行う)研修プログラムにおいて、特別地域連携プログラムの設置を条件に基本となるシーリング数から原則1人加算する「子育て支援加算」に対しても言及。「医師の地域偏在を助長する懸念があり、加算の要件が十分に検討されていないため、来年度の専攻医募集においては導入せず、子育て支援の環境整備の評価方法をはじめとした制度の見直しについて、引き続き慎重かつ十分に検討を行う」とされた。
同機構では、昨日付でこうした厚労省の意見書に対し返答したとしており、今後さらに協議を重ね来年度のシーリング制度を策定していく方針だ。
機構初の現地視察を実施、三重大麻酔科の研修プログラム再開へ
さらに会見では、2020年に発覚した贈収賄事件の影響から研修プログラムが停止されていた三重大学麻酔科に対する現地視察(サイトビジット)を10月4日に行ったと報告した。
同機構として初となる研修施設に対する現地視察では、手術室や専攻医控室、外来などの実地調査、同科元専攻医へのヒアリングなどを実施。その結果やさまざまな評価調査の結果を受けて、同機構理事会は同科の研修プログラムについて来年度からの再開を了承したという。
(陶山慎晃)