乾癬治療に用いられるTNFα阻害薬、インターロイキン(IL)-12/23阻害薬、IL-17阻害薬、IL-23阻害薬などの生物学的製剤について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染リスクや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の転帰悪化リスクの上昇は認められないことが示唆されているが(Dermatol Clin 2021; 39: 545-553)、乾癬患者におけるCOVID-19発症予防効果をもたらすか否かは不明だ。米・University of Miami Miller School of MedicineのJashin J. Wu氏らは、生物学的製剤や経口薬による全身治療を受けている乾癬患者におけるCOVID-19発症リスクについて、非乾癬患者および外用治療のみの乾癬患者と比べた後ろ向きコホート研究を実施。生物学的製剤やメトトレキサート(MTX)による全身治療は、乾癬患者におけるCOVID-19発症リスクを減少させることが示唆されたとJ Am Acad Dermatol(2022年9月19日オンライン版)に報告した。
乾癬患者と非乾癬患者および全身治療群と外用治療群について検討
Wu氏らは、入院・外来診療および薬局における請求データの大規模リポジトリであるSymphony Healthデータセット(700万件のCOVID-19例を含む3億例以上に関する支払い情報)を用い、2019年5月1日〜20年1月1日に乾癬の診断コードが2つ以上記録された乾癬患者16万7,027例(全身治療6万6,632例、外用治療9万9,395例)および非乾癬患者100万2,162例を抽出した。同データセットではワクチン接種状況が把握できなかったため、COVID-19発症に関する追跡は2020年1月1日〜11月11日とした〔米食品医薬品局(FDA)によるSARS-CoV-2ワクチン緊急使用許可は同年12月から〕。
COVID-19発症に関連する因子について、多変量ロジスティック回帰分析を用いて全身治療群と外用治療群を比較。性、年齢、人種およびCOVID-19重症化の危険因子(うっ血性心不全、1型糖尿病、肥満、慢性閉塞性肺疾患)を共変量とし、調整オッズ比(aOR)を算出した。
TNFα阻害薬、MTX、アプレミラスト使用例ではCOVID-19発症率が低い
解析の結果、乾癬患者では非乾癬患者と比べCOVID-19発症との有意な関連が認められた(aOR 1.18、95%CI 1.13〜1.23)。乾癬患者における解析では、全身治療群は外用治療群に比べCOVID-19発症率が低く、TNFα阻害薬使用例のaORは 0.87(95%CI 0.77〜1.00)、MTX使用例では0.81(同0.71〜0.92)、ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害薬アプレミラスト使用例では0.70(同0.57〜0.92)だった。なお、生物学的製剤と経口薬の併用例を除外しても同様の結果であった。
以上からWu氏らは「TNFα阻害薬およびMTXによるCOVID-19の予防効果については、TNFα、IL-6、IL-1阻害といった作用機序により裏付けられている。これらの薬剤はSARS-CoV-2感染リスクを増加させないため、COVID-19流行中にも乾癬治療を継続する上で安全な選択肢であることが示唆された」と述べている。
(編集部)