原発性シェーグレン症候群(pSS)は、免疫系のバランスが崩れることにより眼や口腔の慢性的な乾燥、その他の全身症状を呈する自己免疫疾患で、有効な治療法はない。中国・Peking University People's HospitalのJing He氏らは、pSS患者を対象に低用量遺伝子組み換えヒトインターロイキン2(LD-IL-2)の有効性と安全性を検討する二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)を実施。LD-IL-2の3サイクル投与は、安全性の懸念なしに調節性リンパ球の拡大を誘発し、24週時点の疾患活動性スコアを有意に改善したことなどをJAMA Netw Open2022; 5: e2241451)に報告した。

60例を12週間治療

 現在、pSSにはステロイドや免疫抑制薬による対症療法が行われているが、有害事象を伴うことが多い。CD4陽性T細胞の活性化と免疫ホメオスタシスの調節をつかさどるIL-2は、低用量投与により制御性T細胞を増加させ、免疫細胞のバランスを回復することが示されていた。

 He氏らは、2015年6月~17年8月にPeking University People's Hospitalで登録した活動性pSS患者60例(年齢18~70歳、全例女性)をLD-IL-2群とプラセボ群に1:1でランダムに割り付けて12週間治療し、さらに12週間追跡。両群とも、隔日で100万IUの皮下投与を2週間+2週間の休薬を3サイクル実施した。

 主要評価項目は、intention-to-treat(ITT)集団における24週時点の欧州リウマチ学会(EULAR)シェーグレン症候群疾患活動性尺度(ESSDAI)スコアのベースラインからの3点以上改善とし、副次評価項目は、12、24週時点のEULARシェーグレン症候群患者報告による尺度(ESSPRI)、その他の臨床反応、安全性、免疫細胞サブセットの変化などとした。

主要評価項目達成率はLD-IL-2群67%、プラセボ群27%

 患者の平均年齢±標準偏差は、LD-IL-2群が47.6±12.8歳、プラセボ群が51.0±11.9歳だった。57例(29例 vs. 28例)が試験を完遂した。

 24週時点でESSDAIスコアがベースラインから3点以上低下した患者の割合は、プラセボ群の8例(26.7%)に対しLD-IL-2群では20例(66.7%)と有意に多かった(P=0.004)。群間差は、5.50ポイント(95%CI 1.8~16.68ポイント、P=0.02)だった。

 ESSPRIに基づく12週時点の乾燥、痛み、倦怠感のVisual Analog Scale(VAS)スコアは、プラセボ群と比べLD-IL-2群で大きく改善。群間差は、乾燥が−18.33ポイント(95%CI −28.46~−8.21ポイント、P=0.001)、痛みが−10.33ポイント(同−19.38~−1.29ポイント、P=0.03)、倦怠感が−11.67ポイント(同−20.65~−2.68ポイント、P=0.01)だった。

安全性の懸念なく免疫バランスが回復

 両群とも重篤な有害事象は観察されず、プラセボ群に比べLD-IL-2群で感染症が有意に少なかった〔9例(30.0%) vs. 1例(3.3%)、P=0.006〕。

 免疫学的解析では、LD-IL-2治療中に制御性T細胞とCD24高発現CD27陽性制御性B細胞の増加が認められ、LD-IL-2投与がホメオスタシスの回復につながることが示された。

 He氏らは「pSS患者へのLD-IL-2投与は、有効かつ忍容性の高い治療法となる可能性がRCTで示唆された。こうした臨床効果は、IL-2によるT細胞およびB細胞のバランス回復に起因すると考えられる」と結論している。

(小路浩史)