朝食を食べない妊婦は概日リズムが乱れ、血圧が上昇することが指摘されている。しかし、妊娠高血圧症候群(HDP)との関連は十分に分かっていない。東北大学大学院の相澤美里氏らは、妊婦の朝食摂取頻度とHDPとの関連を検討した。結果をNutr J(2022; 21: 71)に報告した。
約1万9,000例の日本人妊婦を解析
HDPは妊娠合併症のうち最も頻度が高く、世界におけるHDP死は年間7万人を超える。HDPの原因は十分に解明されていないが、地中海食摂取などの健康的な食事摂取によるリスク低下や、食事摂取のタイミングとの関連が報告されている。
そこで相澤氏らは、日本人妊婦を対象に朝食摂取頻度とHDP発症との関連を検討。対象は、2013〜17年に東北大学東北メディカル・メガバンク機構が行った妊婦とその家族を追跡した三世代コホート調査に参加した妊婦2万3,406例のうち、食物摂取頻度調査票(FFQ)のデータを有する1万8,786例(平均出産年齢31.4歳)。出産年齢や妊娠前BMI、世帯収入などが不明な例は除外した。
血圧測定は医療機関で実施し、HDPは妊娠高血圧(GH)、高血圧合併妊娠(CH)、妊娠高血圧腎症(PE)、加重型妊娠高血圧腎症(SPE)に分類。1週当たりの朝食摂取頻度で、毎日摂取の対照群1万3,945例(74.2%)、5〜6回の高頻度摂取群1,882例(10.0%)、3〜4回の中頻度摂取群1,284例(6.8%)、0〜2回の低頻度摂取群1,675例(8.9%)に分けた。対照群と比べ、朝食摂取頻度がより低い群では平均出産年齢が若い、世帯収入が低い、喫煙率が高いなどの特徴があった。
低頻摂取度とHDP発症に相関
HDPの発症は1万8,786例中2,075例で認められた。対照群と比較した各群のHDP発症のオッズ比(OR)を求めた。その結果、出産年齢、妊娠前BMI、世帯収入、喫煙、アルコール摂取、経産回数、GH、つわり、不眠、エネルギー・炭水化物・カリウム・ナトリウム・ビタミンDの摂取などを調整したORは、高頻度摂取群が1.35(95%CI 1.17〜1.57)、中頻度摂取群が1.13(同0.94〜1.35)、低頻度摂取群が1.35(同1.15〜1.58)と、朝食欠食とHDP発症との有意な相関が示された(傾向性のP<0.001)。
同様にHDPの病型別に検討した。その結果、対照群との比較における調整後ORは、GH、CH、PEでは低頻度摂取群で最も高く(順にOR 1.27、95%CI 0.99〜1.62、同1.64、1.21〜2.20、同1.67、1.27〜2.20)、朝食の低頻度摂取との有意な相関が確認された(順に傾向性のP=0.04、P=0.003、P=0.004)。一方、SPEでは低頻度摂取群でのみORが1未満だったものの、有意な関連は認められなかった(OR 0.91、95%CI 0.56〜1.50、傾向性のP=0.54)。
1日のエネルギー摂取量で四分位に分けた解析では、低頻度摂取群の第3四分位群(OR 1.68、95%CI 1.17〜2.40、傾向性のP=0.007)、第4四分位群(同1.66、1.20〜2.31、傾向性のP=0.005)でHDPとの強い関連が認められた。
以上から、相澤氏らは「日本人妊婦においては、妊娠早期の朝食摂取頻度の低さとHDPおよびCH、PEの発症との関連が示唆された。この関連は、1日のエネルギー摂取量が最も多い群で強かった」と結論。「長期的な研究によるさらなる検証が求められる。また、食事摂取のエネルギーや栄養だけでなく、タイミングについてもHDP対策として考慮すべき」と付言している。
(松浦庸夫)