スウェーデン・Karolinska InstitutetのPaul Studenic氏らは、米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)が2011年に暫定的に承認した関節リウマチ(RA)の寛解基準のうち、Boolean寛解の基準を評価。従来の患者全般評価(PtGA)基準(1.0cm、Boolean 1.0)に比べ、閾値を2cmとしたBoolean 2.0ではより多くの患者で寛解達成が得られ、SDAI※1およびCDAI※2 による寛解基準との一致率が高く、機能的寛解や非進行の予測能はBoolean 2.0、SDAI、CDAIで同程度だったことをAnn Rheum Dis2022年10月23日オンライン版)に報告した。

早期およびestablished RAともに寛解率が向上

 RAの寛解に関し、ACR/EULARは2011年に2つの暫定的な基準〔Boolean寛解とSDAI寛解〕を承認した。Boolean寛解は、腫脹関節数(SJC、範囲0〜66)1以下、圧痛関節数(TJC、同0〜68)1以下、PtGA(同0〜1cm)1cm以下、C反応性蛋白(CRP)1mg/dL以下から成るが、PtGA基準が厳格に過ぎるため過剰治療の懸念があるとの意見も少なくなかった。そこでStudenic氏らは、Boolean 1.0とBoolean 2.0の比較を実施した。

 検討には、生物学的製剤(bDMARD、ゴリムマブ、トシリズマブ、リツキシマブ)とメトトレキサート、またはプラセボを比較したランダム化比較試験4件(GO-AFTER、FUNCTION、LITHE、SERENE)に参加したRA患者2,048例〔早期RA 1,101例(平均罹患期間0.8年)および進行(established)RA 947例(同7.1年)〕のデータを用いた。

 治療開始から6カ月後の寛解率は、早期RAではBoolean 1.0の14.8%に対しBoolean 2.0では20.6%、established RAではそれぞれ4.2%、6.0%と、いずれもBoolean 2.0で高かった。この傾向は1年後も同様だった(早期RA:20.1%、25.5%、established RA:6.0%、10.0%)。

 6カ月後のSDAI寛解との一致率は、早期RAではBoolean 1.0の93.4%対しBoolean 2.0では95.9%、established RAではそれぞれ98.0%、98.2%と、いずれもBoolean 2.0で高かった。CDAI寛解についてもほぼ同様の結果が得られた。

広範なRA患者に適用可能

 Boolean 2.0、SDAI、CDAIの寛解基準は、機能的寛解(Health Assessment Questionnaire;HAQ 0.5以下)を予測する陽性尤度比が同程度であった(早期RA:4.23、3.88、4.25、established RA:4.19、4.84、4.84)。なお、Boolean定義からPtGAを除外したBoolean Xでは機能転帰の予測能が悪化した。

 関節破壊進行の指標であるmodified Total Sharp Score(mTSS)の変化量(平均値±標準偏差)については、PtGAの有無や閾値にかかわらず同程度であった(Boolean1.0 0.29±2.08、Boolean2.0 0.25±1.81、BooleanX 0.21±1.9、SDAI 0.27±1.86、CDAI 0.27±1.9)。

 これらの結果を踏まえ、Studenic氏らは「対象となった患者集団はRAの罹患期間や治療歴が多様であるため、今回の結果は広範なRA患者に適用可能と考えられる」とし、新指標を将来の臨床試験やRA診療に採用するよう提案している。一方、EULARはプレスリリースで「新指標に基づくと多くのRA患者が寛解と分類されるようになるが、長期予後の確保や不要な治療のエスカレーションを避けるため、従来の寛解基準の遵守が求められる」と注意を呼びかけている。

(菅野 守)

  • ※1 Simplified Disease Activity Index。3.3以下で寛解
  • ※2 Clinical Disease Activity Index。2.8以下で寛解