日本では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する初の国産経口薬としてエンシトレルビルが承認され注目を集めたが、既存薬についてもさまざまなデータが報告されている。米疾病対策センター(CDC)国立予防接種・呼吸器疾患センターのMelisa M. Shah氏らは、米国の成人COVID-19患者約70万例を対象に、日本でも今年(2022年)2月に承認されたニルマトレルビル/リトナビルの有効性を検討。診断後5日以内の投与により入院率が51%低下したと報告した(MMWR Morb Mortal Wkly Rep2022年11月22日オンライン版)。
ワクチン接種歴、年齢にかかわらず有効
Shah氏らは米国の1億6,000万人以上の電子健康記録(EHR)を含むデータベースから、2022年4月1日〜8月31日に外来でCOVID-19と診断され重症化リスクが高かった成人患者を抽出。診断後5日以内のニルマトレルビル/リトナビル投与と診断後30日以内の入院率の関係などを後ろ向きに検討した。
組み入れ基準を満たしたのは69万9,848例だった。そのうち、診断後5日以内にニルマトレルビル/リトナビルを投与されていたのは19万8,927例(28.4%)、投与されていなかったのは50万921例(71.6%)だった。ニルマトレルビル/リトナビルの適応となるCOVID-19患者のうち、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染歴があるのは15.0%、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを2回以上接種していたのは68.8%だった。
Cox比例ハザードモデルによる検討の結果、COVID-19診断後5日以内のニルマトレルビル/リトナビル投与は、診断後30日以内の入院率の低下と関連していた〔調整ハザード比(aHR)0.49〕。また対象をmRNAワクチンの接種歴で層別化したところ、3回以上接種、2回接種、未接種いずれにおいてもニルマトレルビル/リトナビル投与と入院率低下は関連していた(いずれもaHR 0.50)。この傾向は、対象を年齢で層別化(18〜49歳、50〜64歳、65歳以上)した場合も一貫していた(順にaHR 0.59、0.40、0.53)。
以上の結果について、同氏らは「COVID-19診断後5日以内のニルマトレルビル/リトナビル投与は、診断後30日以内の入院率を51%低下させた」と結論。「ニルマトレルビル/リトナビルは、過去のSARS-CoV-2感染既往やワクチン接種歴の有無にかかわらず、適応となる成人のCOVID-19患者、特に高齢者や複数の基礎疾患を持つ重症化リスクの高い患者に投与されるべきである」と指摘している。
(平山茂樹)