痛風治療における高尿酸血症治療薬フェブキソスタットの開始用量は、欧米と日本で異なっており、アジア人において痛風発作抑制に対する同薬の至適開始用量は明らかでない。韓国・Jeju National University HospitalのJoondon Lee氏らは、痛風患者約220例を対象に後ろ向き研究を実施。投与後3カ月間の痛風発作は、40mg/日開始群で20mg/日開始群と比べ有意に少なく、特に最初の1カ月間でその差が顕著だった。詳細はKorean J Intern Med2022年11月3日オンライン版)に掲載された。

米の40mg開始に対し、日本は10mg、韓国は20~40mg

 痛風発作は、長期の血清尿酸高値だけでなく、尿酸値の急激な低下によっても起こる。尿酸低下療法の開始により、かえって痛風発作を起こしたのでは、服薬コンプライアンスの低下につながりかねない。そのため、尿酸低下薬は低用量で開始して適宜増量することでコンセンサスが得られているが、"低用量"の基準は一貫していない。

 フェブキソスタットに関して、米国リウマチ学会のガイドラインは40mg/日で開始し、最大投与量80mg/日としているのに対し、日本では通常10mg/日から開始し、最大投与量60mg/日としている。韓国では明確な基準は確立されていないものの、専門医は20mg~40mg/日での開始を推奨している。

 Lee氏らは、Jeju National University Hospitalで2018年5月から2年間に痛風と診断されフェブキソスタット治療を開始した患者227例の医療記録を基に、20mg/日開始群(94例)と40mg/日開始群(133例)に分け、後ろ向きに比較した。

3カ月間の痛風発作は40mg14.3%、20mg32.0%

 主な患者背景は、年齢53.2±16.4歳、痛風罹患期間3.7±5.4年、開始前の血清尿酸値9.1±1.4mg/dL、BMI 26.7±7.1、推算糸球体濾過量(eGFR)83.1±29.4mL/分/1.73m2(全て平均±標準偏差)、男性比率は96.5%だった。20mg/日開始群と40mg/日開始群で、これらの背景に加えコルヒチン使用率と痛風結節の有病率に有意差は認められなかった。

 治療開始から3カ月間の痛風発作は、40mg/日開始群と比べ20mg/日開始群で有意に多く(14.3% vs. 32.0%、P=0.002)、特に最初の1カ月で差が顕著だった(7.5% vs. 21.3%、P=0.005)。2~3カ月に限定した解析では有意差が消失したが、Lee氏らは「開始から1カ月で目標尿酸値に到達しない患者には増量が行われたためと考えられる」と説明している。

 罹患期間、痛風結節、eGFR、開始前尿酸値を調整した多変量ロジスティック回帰分析の結果、フェブキソスタット40mg/日開始〔オッズ比(OR)0.461、95%CI 0.246~0.862、P=0.015)、抗炎症薬の予防投与(同0.359、0.158~0.813、P=0.014)が痛風発作減少の独立した予測因子であった。

 血清尿酸値の目標(6mg/dL以下)を達成した患者の割合は、1カ月後と3カ月後ともに、20mg/日開始群と比べ40mg/日開始群で有意に多かった(1カ月後:36.2% vs. 57.9%、P=0.002、3カ月後:45.7% vs. 67.7%、P=0.001)

 同氏らは「韓国の痛風患者において、尿酸低下療法におけるフェブキソスタット開始用量を40mg/日とすることで、20mg/日開始と比べ治療初期における痛風発作を抑制できることが示唆された」と結論。「西洋人と比べ体格が小さい韓国人に対する至適開始用量を特定したことは重要」と付言している。

(小路浩史)