オランダ・Leiden University Medical CenterのJeroen H.P.M. van der Velde氏らは、糖尿病のない中高年の男女775例を対象に、坐位時間の中断回数および身体活動のタイミングと肝脂肪量およびインスリン抵抗性の関連について検討。午後または夜間の中~高強度の身体活動(MVPA)が、インスリン抵抗性の低下に関連するとの解析結果をDiabetologia(2022年11月1日オンライン版)に発表した。
装着型の活動量計データに基づき身体活動を評価
坐位行動は、2型糖尿病などの代謝疾患リスクの上昇と関連することが指摘されている。一方、身体を動かすことによる坐位行動の頻回の中断が、中性脂肪や血糖の低下など心血管代謝プロファイルの改善につながることや、MVPAが肝脂肪量を減少させてインスリン感受性を改善することが示されている。また身体活動量だけでなく、身体活動を行うタイミングが代謝やグルコースの恒常性に影響を及ぼす可能性も指摘されている。
van der Velde氏らは、身体活動によるインスリン感受性の改善効果は身体活動を行うタイミングの影響を受けるとの仮説を立て、オランダの住民ベースの前向きコホート研究Netherlands Epidemiology of Obesity(NEO)のデータを用いて坐位時間の中断および身体活動のタイミングと¹H-MRS法で測定した肝脂肪量およびインスリン抵抗性の関連について検討した。
解析対象は、2008~12年に同研究に登録された45~65歳の参加者のうち、活動量と心拍数のモニタリング機能を備えた装着型デバイス(ActiHeart)による身体活動の客観的な評価データが得られた糖尿病のない775例(平均年齢56歳、平均BMI 26.2、男性42%)。運動する時間帯を午前中(6~12時)、午後(12~18時)、夜間(18~0時)に分け、1日当たりのMVPA時間の割合が最も高い時間帯で午前群、午後群、夜間群、時間帯を問わず1日を通じてほぼ同程度のMVPAを行っている均等群の4群に分類した。
なお、MVPAは3MET超の活動、低強度の身体活動(LPA)は1.5MET超3.0MET未満の活動とし、坐位時間の中断は加速度0.75m/秒2超の活動時間が記録されている場合と定義した。
夜間のMVPAでインスリン抵抗性25%低下
線形回帰モデルを用いた解析の結果、総坐位時間は肝脂肪量とインスリン抵抗性のいずれにも関連していなかった。 また、坐位時間の中断が肝脂肪を減少させ、2型糖尿病予防につながるとの仮説とは対照的に、坐位時間の中断回数と肝脂肪量の22%増加(95%CI 9~37%)との関連が認められた。総MVPA時間はインスリン抵抗性の低下に関連していたが(MVPA時間が1時間増加するごとに-5%、95%CI -10~0%)、肝脂肪量には関連していなかった。
MVPAのタイミングはインスリン抵抗性の低下に関連していたが、肝脂肪量には関連していなかった。均等群と比べたインスリン抵抗性は、午前群では同程度だったが(-3%、95%CI-25~16%)、午後群と夜間群では低かった(午後:-18%、95%CI-33~-2%、夜間:-25%、同-49~-4%)。
以上を踏まえ、van der Velde氏らは「非糖尿病患者では、身体活動を行う時間帯が代謝の健康状態に関係している可能性がある。このことは生活習慣に関する助言を行う際に考慮すべきかもしれない」との見解を示した。その上で、「さらなる研究で身体活動のタイミングが2型糖尿病の発症予防にも重要な役割を果たすかを検討すべき」と付言している。
(岬りり子)