国立循環器病研究センター脳神経内科部長の猪原匡史氏らは、国内多施設共同研究PROPOSE試験に登録した脳卒中後てんかん患者を対象に、脳波所見とてんかん発作の再発との関連を検討。その結果、脳波の異常所見(Interictal epileptiform discharges;IEDs)が脳卒中後てんかん発作の再発と有意に関連することが示されたとBrain Commun(2022年11月26日オンライン版)に発表した。
解析コホート187例、検証コホート187例
脳卒中後てんかんは、脳卒中罹患後の主要な合併症の1つである。脳卒中後てんかんの再発は機能的予後が不良となるだけでなく、生存率を低下させるため、早期介入による再発予防が重要となる。
脳波所見はてんかん診療の主軸であるが、これまでに脳卒中後てんかんの再発と脳波所見との関連について検討した報告はほとんどない。
そこで猪原氏らは今回、2014~18年に国立循環器病研究センターで登録した初発の脳卒中後てんかんと診断された患者のうち、脳波検査を実施した187例(解析コホート)を対象に、異常な脳波所見とてんかん再発との関連を分析した。1年間の追跡期間中に生じたてんかん発作の再発、予後、抗てんかん薬の服用状況、脳波を評価。異常な脳波所見としてIEDs、Periodic discharges (PDs)、Rhythmic delta activity (RDA)を検討した。
また、同センター以外の7施設〔神戸市立医療センター中央市民病院、済生会熊本病院、東京都健康長寿医療センター、中村記念病院(札幌市)、聖マリア病院(福岡県)、国立病院機構岡山医療センター、京都大学〕で初発の脳卒中後てんかんと診断された187例(検証コホート)で検証した。
再発リスクはIEDsで3.8倍、棘波や鋭波を認めるPDsでも多い傾向
分析の結果、IEDsを認めたのは48例(25.7%)、PDsは39例(20.9%)、RDAは12例(6.4%)だった。
単変量Cox比例ハザード回帰分析の結果、IEDsとてんかん再発との間に有意な関連が認められた〔ハザード比(HR)3.82、95%CI 2.09~6.97、P<0.0001〕。
一方、PDs、RDAとてんかん再発との間に有意な関連はなかった〔PDs:HR 1.67、95%CI 0.87~3.21、P=0.12、RDA:同1.08、0.33~3.48、P=0.90〕。ただし、PDsで棘波や鋭波を認めるケースでは、てんかん再発が多い傾向だった(同1.85、0.93~3.69、P=0.08)。
年齢、性、初発/再発てんかん、抗てんかん薬の種類などで層別化したサブループ解析でも、IEDsとてんかん再発との有意な関連はおおむね維持された(図)。
図.サブグループ解析の結果
(Brain Commun; 2022)
検証コホート187例の解析でも、IEDsとてんかん再発との間に有意な関連が認められた(P=0.048)。
以上を踏まえ、猪原氏は「脳卒中後てんかん診療では、てんかん再発リスクが高いIEDsの存在に留意し、抗てんかん薬による治療を適切に行うことが重要だ」と結論。さらに「脳波所見は判読が難しく、これまで均質な評価をしにくいという側面があったが、脳卒中やてんかんの診療に特化した医療機関8施設が参加した今回の研究で、実臨床を反映する信憑性の高い結果が得られたのではないか」と評価した。
(比企野綾子)