総合商社が国内外で医療関連事業を強化している。高齢化による市場の拡大に加え、新型コロナウイルス禍を契機にオンライン診療などのデジタル・トランスフォーメーション(DX)が進み、商機が急増。医療現場の効率化だけでなく、蓄積したデータを活用した新たなビジネスを模索している。
 伊藤忠商事はこのほど、救急隊と病院が電話や紙でやりとりする患者情報をデジタル化し、迅速な搬送や治療につなげるTXPメディカル(東京)に出資。コンピューター断層撮影(CT)など検査画像の共有システムを手掛けるエムネス(広島市)とも資本業務提携した。
 伊藤忠の浅野哲也担当部長は「ヘルスケア事業はアナログな部分が多く、効率化の余地が大きい」と話す。今後は、製薬や健康管理など関連事業のデータを連携させ、全体のサービスの質向上を目指す。
 三菱商事は子会社を通じて、医療機関とデジタル企業をマッチングし、事務の電子化などを支援するサービスを開始。住友商事は、首都圏を中心に展開するドラッグストア「トモズ」の一部店舗で、調剤作業の自動化に着手した。顧客の待ち時間が約3割減少し、調剤ミスも減ったという。
 海外では、人口が増加する新興国を中心にビジネスを拡大。三井物産はマレーシアなど10カ国で約80病院の運営に参画する。コロナ禍で医療ツーリズムは打撃を受けたが、オンライン診療などでこれらの病院事業の業績は過去最高となった。3000万人超の患者データを生かし、製薬企業や保険会社をターゲットにした新事業を検討する。
 双日は、マレーシアやオーストラリアでクリニックを運営する企業に出資。DXを支援し、予防医療に携わる企業など外部との連携を促している。 (C)時事通信社