フランス・Université Paris Cité/Assistance Publique-Hôpitaux de Paris CentreのXavier Puéchal氏らは、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)患者の大規模観察データを用いて、GPAの寛解導入療法におけるリツキシマブとシクロホスファミドの有効性を比較検討。その結果、リツキシマブはシクロホスファミドと比べ、プレドニゾンの用量を10mg/日以下に抑えながらも寛解達成率が有意に高かったとJAMA Netw Open2022; 5: e2243799)に発表した。

RCTを模倣する手法を用いた効果比較研究

 抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)の寛解導入において、リツキシマブはシクロホスファミドに対する非劣性がランダム化比較試験(RCT)で報告されているが、GPA治療における優位性はいずれの薬剤とも示されていない。一方、RCTのpost hoc解析では、プロテイナーゼ(PR)3陽性AAVの寛解導入療法において、リツキシマブはシクロホスファミドに比べ完全寛解達成率が高いとの結果が得られている。

 そこでPuéchal氏らは今回、フランス国内60カ所以上の施設が参加するFrench Vasculitis Study Group(FVSG)レジストリのデータを用いて、RCTを模倣するtarget trial emulationと呼ばれる手法によりリツキシマブとシクロホスファミドの有効性を比較する効果比較研究を実施した。

 解析対象は、同レジストリの参加条件である米国リウマチ学会(ACR)分類基準および/またはチャペルヒル分類の基準を満たし、2008年4月1日~18年4月1日に寛解導入療法としてリツキシマブまたはシクロホスファミドを1回以上投与された疾患活動性を有する新規診断/再発のGPA患者194例(平均年齢±標準偏差54±15歳、男性56.7%)。リツキシマブ群(375mg/m2を4週間または1gを2週間ごとに静注)とシクロホスファミド群(1日目、15日目、29日目に0.6g/m2、その後は21日ごとに0.7g/m2を静注)に割り付けた。バーミンガム血管炎活動性スコア(BVAS)3以上を疾患活動性ありと定義した。

 主要評価項目は6±2カ月後の寛解達成率、副次評価項目はプレドニゾン用量にかかわらず6±2カ月後にBVASスコアが0を達成した患者の割合、24カ月後の治療継続率、6カ月後の安全性とした。寛解は、新規または悪化の徴候がないこと(BVASスコアが0およびプレドニゾン用量が10mg/日以下)と定義した。

6カ月後の寛解達成率はリツキシマブ群73%、シクロホスファミド群40%

 GPAの新規診断例は165例(85.1%)で、データが入手できた182例中147例(80.8%)はPR3陽性だった。導入療法の内訳は、リツキシマブ群が61例、シクロホスファミド群が133例だった。

 多重代入法を適用したデータセットの重み付け解析の結果、6±2カ月後の寛解達成率はシクロホスファミド群の40.1%に対し、リツキシマブ群では73.1%と有意に高かった(相対リスク1.82 、95%CI 1.22~2.73、リスク差33.0%、95%CI 12.2~53.8%、RRのE値3.05)。新規診断例や最近治療を受けた例に限定した解析でも同様の結果が得られた。MPO-ANCA陽性GPA患者(27例)のサブグループ解析において、リツキシマブ群では10例中8例、シクロホスファミド群では17例中8例が6±2カ月後に寛解を達成した(非加重RR 1.73、95%CI 0.96~3.11)。

 また、プレドニゾン用量にかかわらず6±2カ月後にBVASスコア0を達成した患者の割合は、リツキシマブ群85.5%、シクロホスファミド群82.6%。24カ月後の治療非継続は、リツキシマブ群7例、シクロホスファミド群51例に認められ、多くは再発によるものだった。

 以上から、Puéchal氏らは「target trial emulationの手法を用いて新規診断/再発GPA患者の観察データを解析した結果、寛解導入療法としてリツキシマブを用いた群では、シクロホスファミド群と比べて、プレドニゾンを10mg/日以下に減量した状態下での寛解達成率が有意に高かった」と結論。研究の意義について「前向きの観察データを用いた効果比較研究により、希少疾患であるGPAの寛解導入において、リツキシマブがシクロホスファミドよりも優れるとした仮説を検証しえた」と付言している。

(小谷明美)