好酸球性胃腸炎(EGE)は食物を原因とし、腹痛、嘔吐、下痢などの消化器症状を呈する消化管のアレルギー疾患である。済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科部長の十河剛氏らは、原因不明の消化器症状を訴え同院で消化管内視鏡検査を行った小児860例を後ろ向きに解析。その結果、8人に1人がEGEと診断され、EGEは決してまれな疾患ではないことが示されたとPediatr Int(2022; 64: e15322)に発表した。(関連記事「好酸球性胃腸炎に『Rainbow食事療法』を開発」「好酸球性上部消化管疾患の基礎と臨床」「消化管アレルギーをどう診るか」
EGE患者の60%が再発を繰り返す
EGEは好酸球性消化管疾患(EGID)の1つで、患者は欧米に比べ日本で多い。免疫応答の異常により消化管に炎症が起きることが原因とされるが、免疫学的異常の詳細は明らかでない。症状は食欲不振、嘔吐、腹痛、下痢、血便、体重減少、腹水などで、重症例では消化管閉塞、腸破裂、腹膜炎を起こすこともある。
患者の60%程度は再発を繰り返し、慢性化するとステロイド依存性となり、薬物治療に伴う副作用が問題となる。しかし、欧米では症例数が少ないこともあり、診断および治療のための研究が進んでいないのが現状だ。
そこで十河氏らは今回、小児EGEの臨床的特徴を明らかにすることを目的に、2007年4月~17年12月に原因不明の消化器症状があり、済生会横浜市東部病院で内視鏡検査を受けた1~15歳の小児860例を対象に単施設後ろ向き研究を実施。症状、内視鏡所見、治療法、転帰などを検討した。
原因が疑われる食物の除去+抗アレルギー薬の併用が有効
検討の結果、2015年に厚生労働省研究班が作成したEGIDの診断基準によりEGEと診断されたのは、860例中109例(12.7%、男児71例、女児38例)。診断時の年齢中央値は11歳(範囲1~15歳)だった。主訴は腹痛が83例(76.1%)、下痢が26例(23.9%)。上部および下部消化管内視鏡検査で正常所見が得られたのは32例(29.4%)だった。最も多い治療法は、EGEの原因が疑われる食物の除去+抗アレルギー薬の併用(50例、45.9%)。43例(39.4%)で症状消失、53例(48.6%)で症状が改善した。
以上を踏まえ、十河氏は「慢性腹痛など原因不明の消化器症状を訴える小児に消化管内視鏡検査を行ったところ、8人に1人がEGEと診断された。小児に生じた原因不明の消化器症状では、EGEを鑑別診断として考慮すべきだ」と結論。さらに「従来、比較的まれとされてきたEGEの患者数は、実際にはもっと多いかもしれない。原因不明の腹部症状があれば、小児でも内視鏡検査を行う意義は十分にある」と付言している。
(比企野綾子)