新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株オミクロンは現在、5つの系統(BA.1、BA.2、BA.3、BA.4、BA.5)に分類される。中でもBA.5から派生したBQ.1.1とBA.2から派生したXBBの感染例は、国内を含む多くの国々で増加している。東京大学医科学研究所ウイルス感染部門特任教授の河岡義裕氏らは、BQ.1.1およびXBBに対する抗体薬と抗ウイルス薬の効果を検討。その結果をN Engl J Med(2022年12月7日オンライン版)で報告した。(関連記事「オミクロン株への抗ウイルス薬の効果を確認」「オミ株BA.2にも抗体薬、抗ウイルス薬は有用」)
抗ウイルス薬では高い増殖抑制効果
まず、河岡氏らは検証検体から分離したBQ.1.1およびXBBに対する4種類の抗体薬の感染阻害効果を検討した。抗体薬には昨年(2021年)7月に特例承認を受けた抗体カクテル療法カシリビマブ/イムデビマブ(商品名ロナプリーブ)、ソトロビマブ(同ゼビュディ)、チキサゲビマブ/シルガビマブ(同エバシェルド)、bebtelovimab(国内未承認)を用いた。
その結果、ソトロビマブ、カシリビマブ/イムデビマブ、チキサゲビマブ/シルガビマブの中和活性はいずれも著しく低かった。さらに、これまでBA.2およびBA.5に対する高い中和活性を維持してきたbebtelovimabも、BQ.1.1およびXBBに対しては中和活性が著しく低かった。
次に、3種類の抗ウイルス薬に対する効果を検討した。レムデシビル(商品名べクルリー)、モルヌピラビル(同ラゲブリオ)、ニルマトレルビル/リトナビル(同パキロビッドパック)を用いて解析したところ、全ての薬剤がBQ.1.1およびXBBに対して高い増殖抑制効果を示した。効果の程度は従来株に対するものと同等だった。
同氏らは「研究で得られた成果は、医療現場においてCOVID-19治療薬の適切な選択に役立つだけでなく、行政機関が今後のCOVID-19対策計画を策定・実施する上でも重要な情報となる」としている。
(植松玲奈)