既治療のHER2陽性転移性乳がんにおけるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)とトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の有効性と安全性の比較を目的とする非盲検の第Ⅲ相ランダム化比較試験DESTINY-Breast03。米・University of California, Los AngelesのSara A. Hurvitz氏らは今回、同試験の2回目の中間解析を行い、T-DXd投与により無増悪生存(PFS)および全生存(OS)がいずれも有意に改善したことをLancet(2022年12月7日オンライン版)に報告した。
PFS中央値が22カ月延長、死亡リスクは約36%低下
DESTINY-Breast03試験には北米、日本を含むアジア、欧州、オーストラリア、南米の169施設が参加。2018年7月〜20年6月に、トラスツズマブとタキサン系薬剤による治療歴を有する18歳以上のHER2陽性切除不能・転移性乳がん患者524例が登録され、T-DXd群(261例、5.4mg/kgを3週ごとに静注)およびT-DM1群(263例、3.6mg/kgを3週ごとに静注)に1:1でランダムに割り付けた。
年齢中央値はそれぞれ54.3歳、54.2歳で女性がともに99.6%、前治療レジメン数の中央値はともに2レジメンだった。1回目の中間解析では、主要評価項目であるPFSがT-DXd群で有意に優れていたことなどが報告された(関連記事「T-DXd、HER2陽性転移性乳がんで著効」)。
今回は2回目の中間解析の結果で、追跡期間中央値はT-DXd群が28.4カ月(四分位範囲22.1〜32.9カ月)、T-DM1群は26.5カ月(同14.5〜31.3カ月)だった。
盲検下独立中央評価(BICR)によるPFSの中央値は、T-DM1群の6.8カ月(95%CI 5.6〜8.2カ月)に対してT-DXd群では28.8カ月(同22.4〜37.9カ月)と有意に長かった〔ハザード比(HR)0.33、95%CI 0.26〜0.43、名目上のP<0.0001〕。1年PFSはそれぞれ33.9%(95%CI 27.7〜40.2%)、75.2%(同69.3〜80.2%)、2年PFSは26.4%(同20.5〜32.6%)、53.7%(同46.8〜60.1%)だった。
図. 主要評価項目:BICRによるPFS
(Lancet 2022年12月7日オンライン版)
OS中央値はいずれも未到達だったが(T-DM1群:95%CI 34.0カ月〜評価不能、T-DXd群:同40.5カ月〜評価不能)、T-DXd群で死亡リスクが約36%有意に低下した(HR 0.64、95%CI 0.47〜0.87、P=0.0037)。1年OSはそれぞれ86.0%(95%CI 81.1〜89.8%)、94.1%(同90.4〜96.4%)、2年OSは69.9%(同63.7〜75.2%)、77.4%(同71.7〜82.1%)だった。
奏効率、奏効期間も良好、管理可能な安全性プロファイル
BICRによる奏効率はT-DM1群の35%(95%CI 29.2〜41.1%)に対してT-DXd群では79%(同73.1〜83.4%)だった。奏効期間中央値はそれぞれ23.8カ月(95%CI 12.6〜34.7カ月)、36.6カ月(同22.4カ月〜評価不能)だった。
頻度の高い治療関連有害事象として、消化器系では悪心(T-DM1群 30% vs. T-DXd群 77%)、嘔吐(11% vs. 52%)、便秘(20% vs. 37%)、血液・リンパ系では貧血(20% vs. 37%)が認められた。T-DXd群では脱毛(3% vs. 40%)も多かった。
Grade 3以上のものはT-DM1群は135例(52%)、T-DXd群では145例(56%)と同程度だった。治療に関連する間質性肺疾患または肺臓炎はT-DM1群の8例(3%)、T-DXd群の39例(15%)に認められたが、いずれもGrade 4以上のものはなかった。
Hurvitz氏らは、「T-DXdは、HER2陽性転移性乳がんの二次治療における標準治療であることが再確認され、より長期の治療でも管理可能な安全性プロファイルが確認された」と結論。「われわれの知る限り、既治療のHER2陽性転移性乳がんにおいても、最も長いPFSが認められた」と付言している。
(菅野 守)