中国・Fujian Medical UniversityのZheng Zhu氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した糖尿病患者の転帰と入院前に使用していた血糖降下薬との関連を、観察研究31件・約370万例のシステマチックレビューとネットワークメタ解析で検討。その結果、解析対象とした8種類の血糖降下薬のうち、集中治療室(ICU)入室、侵襲的または非侵襲的な機械的人工換気の使用、院内死亡の複合リスクが最も低かったのはSGLT2阻害薬、次いでGLP-1受容体作動薬、ビグアナイド薬の順だったとJAMA Netw Open(2022; 5: e2244652)に発表した。
SGLT2阻害薬はインスリン含む4薬より低リスク
Zhu氏らは、医学データベースPubMed、EMBASE、Cochrane Central Register、Web of Science、ClinicalTrials.govを今年(2022年)9月5日まで検索。COVID-19で入院した糖尿病患者の転帰と入院前14日以上にわたり使用していた血糖降下薬との関連を検討した観察研究31件(368万9,010例)を抽出し、ランダム効果モデルによるネットワークメタ解析に組み入れた。
8種類の血糖降下薬(SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、ビグアナイド薬、DPP-4阻害薬、チアゾリジン系薬、インスリン分泌促進薬、αグルコシダーゼ阻害薬、インスリン)の投与群間でCOVID-19の有害転帰(ICU入室、機械的人工換気使用と院内死亡の複合)のリスクを比較した。
その結果、インスリン群と比べて、SGLT2阻害薬群は有害転帰のリスクが有意に低く〔対数オッズ比(logOR)0.91、95%確信区間(CrI)0.57~1.26〕、DPP-4阻害薬群(同0.61、0.28~0.93)、インスリン分泌促進薬群(同0.37、0.02~0.72)、αグルコシダーゼ阻害薬群(同0.50、0.00~1.01)と比べても有意に低かった。
また、GLP-1受容体作動薬群もインスリン群(logOR 0.74、95%CrI 0.41~1.08)、DPP-4阻害薬群(同0.44、0.12~0.74)と比べてリスクが有意に低かった。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染対策としてはワクチン接種が最も重要であるが、世界にはまだワクチンが行き届いていない人や、接種を望まない人がいる。そのため、COVID-19の重症化を防ぐため、安全かつ安価で、広く入手できる治療選択肢が必要とされている。
インスリン使用=重症でリスク上昇の可能性
一方、インスリン群は有害転帰のリスクが高く、前述の2群に加えてビグアナイド薬群(logOR 0.71、95%CrI 0.48~0.96)、DPP-4阻害薬群(同0.31、0.05~0.58)、インスリン分泌促進薬群(同0.54、0.27~0.82)、チアゾリジン系薬群(同0.61、0.17~1.05)もインスリン群と比べて有意にリスクが低かった。
累積順位曲線下面積(SUCRA)による順位付けの結果、有害転帰のリスクが最も低かったのはSGLT2阻害薬(SUCRA 6%)、次いでGLP-1受容体作動薬(同25%)、ビグアナイド薬(同28%)の順で、最も高かったのはインスリン(同99%)だった。
以上を踏まえ、Zhu氏らは「COVID-19発症前にSGLT2阻害薬を使用していた糖尿病患者では有害転帰のリスクが低く、GLP-1受容体作動薬およびビグアナイド薬の使用者でも比較的リスクが低かった」と結論。「インスリン群でリスクが高かった点については、さらなる検討が必要」とした上で、「インスリン使用者は糖尿病の重症例や罹病期間が長い患者の可能性があり、そのような患者がCOVID-19を発症した場合は有害転帰のリスクが高くなる」と説明している。
(太田敦子)