有識者で構成する政府の「全世代型社会保障構築会議」(座長・清家篤日本赤十字社社長)は14日、社会保障改革に関する報告書案をまとめた。16日にも岸田文雄首相に提出する。少子化対策を柱に据え、子育て世帯への経済的支援や仕事との両立を後押しする仕組みの構築を提言。医療制度を支えるため、所得に応じて高齢者に医療費負担増を求めるほか、多様な働き方ができる環境整備も打ち出した。
 政府は報告書を受け、優先的に取り組む課題や中長期的に検討するテーマを整理。政策の実施時期を盛り込んだ改革工程表を近く作成し、必要な法改正などに着手する。
 報告書案は「少子化は国の存続そのものにかかわる問題」と指摘し、「子育て・若者世代への支援を急速かつ強力に整備する」必要性を強調。負担を将来世代に先送りせず、全国民が能力に応じて社会保障制度を支え合う基本理念を提示した。
 子育て支援では、妊娠・出産・子育てを通じた切れ目のない包括的な支援体制の早期構築を要請。出産育児一時金の増額など経済的支援に加え、時短勤務を選ぶ会社員や育児休業給付の対象外となっている自営業者らに対する新たな給付制度の創設を早急に検討するよう促した。
 さらに将来的な課題として、現在中学生以下の子ども1人当たり原則1万~1万5000円を支給している児童手当の拡充も明記。継続的に支援するため、裏付けとなる恒久的な財源の検討も求めた。
 医療保険制度改革では、所得が高い75歳以上の後期高齢者の保険料率引き上げを主張。患者に身近なかかりつけ医の機能強化も盛り込んだ。
 働き方の多様化では、2025年に予定される年金制度改革に向け、厚生年金や健康保険に加入できる労働者の範囲を広げるため、企業規模要件の撤廃を提案。勤労者皆保険の実現を目指し、フリーランスや単発の仕事を受ける「ギグワーカー」への社会保険適用の検討も打ち出した。
 人口減少で地域社会の支え合い機能が低下することも今後の問題点として指摘。孤独・孤立対策の充実や高齢者の住まい確保にも言及した。 (C)時事通信社