新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの1回接種により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後遺症が29%低減できることが示された。米・University of Iowa のAlexandre R. Marra氏らはSARS-CoV-2ワクチンの少なくとも1回接種によるCOVID-19後遺症に対する予防効果についてシステマチックレビューとメタ解析を施行。結果をAntimicrob Steward Healthc Epidemiol(2022 ; 2: e192)に報告した。
論文6件、25万1,123例を解析
SARS-CoV-2ワクチンはCOVID-19の発症率を減少させることが複数の研究で明らかになっているが、COVID-19後遺症に関する効果は明らかでない。そこでMarra氏らは、SARS-CoV-2ワクチンの少なくとも1回接種によるCOVID-19後遺症に対する予防効果に関してシステマチックレビューとメタ解析を行った。
同氏らは、2019年12月1日~22年4月27日にPubMed、 CINAHL、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Scopus、Web of Scienceに登録されたSARS-CoV-2ワクチン(Pfizer/BioNTech、Moderna、 AstraZeneca、 Janssen社製)の少なくとも1回接種によるCOVID-19後遺症に対する効果を検討した文献を検索した。COVID-19後遺症はCOVID-19罹患後に症状(倦怠感、筋力低下、筋肉痛、不安、記憶障害、睡眠障害、息切れなど)が3週間以上持続した場合と定義した。ワクチン接種例と非ワクチン接種例の診断オッズ比(DOR)を算出。ワクチン効果は100%×(1-DOR)で推計した。
文献検索の結果、COVID-19後遺症に対するワクチンの効果を評価した研究は10件(計160万830例)抽出された。
論文6件(25万1,123例)についてメタ解析を行った結果、プールしたCOVID-19後遺症罹患率は、非ワクチン接種症例で39.1%、SARS-CoV-2ワクチンを少なくとも1回接種した症例で37.6%だった。SARS-CoV-2ワクチンを少なくとも1回接種した症例のCOVID-19後遺症に対するプールしたDORは0.708(95%CI 0.692~0.725)で、ワクチン効果は29.2%(同27.5~30.8%)と推定された。
感染前のワクチン接種で効果高い
論文6件中4件はSARS-CoV-2感染前に接種したワクチンの効果を検討しており、ワクチン最低1回接種によるCOVID-19後遺症に対するプールしたDORは0.647(95%CI 0.619~0.677)で、ワクチン効果は35.3%(同32.3~38.1%)と推定された。一方、SARS-CoV-2感染後に接種したワクチンの効果を検討した論文は3件、DORは0.726 (同 0.707~0.746)で、ワクチン効果は27.4%(同25.4~29.3%)と推定された。このことからMarra氏は「COVID-19後遺症に対する効果はSARS-CoV-2感染後よりも感染前にワクチンを接種する方が高かった」と指摘した。
以上を踏まえ、同氏は「SARS-CoV-2感染前および感染後のワクチン接種はワクチン効果が低いにもかかわらず、COVID-19後遺症を有意に低減させた」と結論。さらに「今回の知見から、SARS-CoV-2に感染しワクチン接種を躊躇している者であっても、COVID-19後遺症を有する場合はワクチン接種が勧められることが示唆された」と付言した。
(大江 円)