最近の大規模ランダム化比較試験(RCT)で、免疫調節薬が一般集団の心血管(CV)イベントを低減させることが示されている。米・Brigham and Women's HospitalのDaniel H. Solomon氏らは、関節リウマチ(RA)患者においてもこうした効果が得られるかを、メトトレキサート(MTX)治療に強力な抗炎症作用を有するTNFα阻害薬を追加する群と、免疫調節薬のサラゾスルファピリジンおよびヒドロキシクロロキンを追加する群(3剤療法群)で比較するRCTにより検討。TNFα阻害薬だけでなく3剤療法群でも造影PET/CT検査において血管炎症の指標が有意に改善したことをAnn Rheum Dis(2022年11月30日オンライン版)で報告した。

115例をランダム化し24週治療

 血管内炎症は、プラークの破綻やCVイベントの発生に関係しており、免疫抑制薬はその抗炎症作用を介してCVイベントを低減させると考えられる。RAは代表的な全身炎症疾患であり、Solomon氏らは、同様の効果が見込めると予測した。

 米国の41施設で、MTX治療にもかかわらず中等度以上の疾患活動性(DAS28-CRP 3.2超)を呈するRA患者115例を、TNFα阻害薬追加群(58例)と3剤療法群(57例)にランダムに割り付け、24週間治療した。患者と治療医師は非盲検だが、読影者は盲検とした。

 TNFα阻害薬群には、アダリムマブ40mgを隔週またはエタネルセプト50mgを毎週追加し、3剤療法群には免疫調節薬のサラゾスルファピリジン1gを1日2回およびヒドロキシクロロキン200mgを1日2回追加した。

 ベースライン時と24週後に、18F-フルオロデオキシグルコース(FDG) PET/CTを用いて頸動脈または大動脈の18F-FDG集積比(TBR)を測定。CVリスクの指標となる血管炎症の変化を評価した。

血管炎症の変化と疾患活動に関連なし

 両群の背景は同等で、年齢中央値58.0歳、女性比率71.3%、血清検査でリウマトイド因子陽性または抗CCP抗体陽性56.8%、ベースライン時のDAS28中央値4.8(四分位範囲4.0~5.6)だった。

 両群とも、ベースライン時と比べ治療後のTBRは有意に低下し、変化量±標準偏差はTNF阻害薬追加群が−0.24±0.51、3剤療法群が−0.19±0.51だった。Solomon氏らは、TNFα阻害薬の作用機序などを踏まえて、TNFα阻害薬追加群で高い効果が得られると予測していたが、両群間に差はなかった(変化量の差 −0.02、95%CI −0.19~0.15、P=0.79)。

 疾患活動性は両群で有意に低下したが、TBRの変化と疾患活動性との間に関連は認められなかった(調整後β=0.04、95%CI −0.03~0.10)。

 これらの結果を踏まえ、同氏らは「TNFα阻害薬の追加と3剤療法のいずれでも、RA患者の血管炎症において臨床的に重要な改善が得られた。改善効果は、TNFα阻害薬追加と3剤療法で同等だった」と結論。「疾患活動性に対する効果とは関係なく血管炎症が改善される機序については、今後の研究課題だ」と付言している。

(小路浩史)