カナダ・University of AlbertaのJason Weatherald氏らは、ランダム化比較試験(RCT)のシステマチックレビューとメタ解析により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による低酸素性呼吸不全を呈しているが気管内挿管未実施の患者における、覚醒下での腹臥位(うつぶせ)管理の有効性と安全性を通常ケアと比較検討。覚醒下腹臥位がCOVID-19患者における気管内挿管リスクを低減することをBMJ2022; 379: e071966)で報告した(関連記事「コロナ重症例、"腹臥位"で予後改善」)。

気管内挿管や死亡リスク、有害事象を評価

 Weatherald氏らは、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trialsのデータベースから、2022年3月4日までに掲載された17件(2,931例)のRCTを抽出し、システマチックレビューを実施。組み入れ基準は、COVID-19関連の低酸素性呼吸不全を呈する成人を対象に覚醒下での腹臥位と通常ケア(非腹臥位)を比較したRCT。レビュアー2人が個別にデータを抽出し、バイアスリスクを評価した。

 主要評価項目は気管内挿管とし、副次評価項目は死亡率、人工呼吸器不使用日数、集中治療室 (ICU) 滞在期間と入院期間、酸素投与法の強化(高流量システムへの変更)、有害事象(AE)などとした。

 主要評価項目と副次評価項目について、ランダム効果モデルを用いたメタ解析を実施。気管内挿管と死亡率のアウトカムについては、ベイズ統計学を用いたメタ解析を実施した。アウトカムごとにGRADEを用いてエビデンスの確実性を評価した。

気管内挿管リスク17%低下、死亡には影響なし

 17件の試験のバイアスについては、低バイアスリスク12件、なんらかのバイアスの懸念あり3件、高リスク2件だった。

 覚醒時腹臥位は、通常ケアと比較して気管内挿管リスクを17%低減させた〔粗平均値24.2% vs. 29.8%、相対リスク(RR)0.83(95%CI 0.73~0.94、確実性:高〕。これは1,000人当たり55件(95%CI -87~-19件)の気管内挿管低減に相当する。

 一方、覚醒下腹臥位は、副次評価項目〔死亡率(15.6% vs. 17.2%、RR 0.90、95%CI 0.76~1.07、確実性 高)、人工呼吸器不使用日数(平均差0.97日、95%CI −0.5~3.4日、確実性 低)、ICU滞在期間(同−2.1日、−4.5~0.4日、確実性 低)、入院期間(同−0.09日、−0.69~0.51日、確実性 中等)、酸素投与法の強化(21.4% vs. 23.0%、RR 1.04、95%CI 0.74~1.44、確実性 低)〕に有意な影響を与えなかった。

ベイズ統計学による解析でも結果は同じ

 覚醒下腹臥位に関連した有害事象はまれで、主なものは、カテーテルの偶発的な脱落および痛み・不快感だった。

 ベイズ法によるメタ解析では、気管内挿管回避に対する覚醒下腹臥位の便益は高い可能性が示された(無情報事前分布を用いた平均RR 0.83、95%CI 0.70~0.97、RRの事後確率<0.95=96%)。一方、死亡率に対する便益は低かった (同0.90、0.73~1.13、<0.95=68%)。

 Weatherald氏らは「覚醒下腹臥位は、通常のケアと比較して低酸素性呼吸不全を呈する成人COVID-19患者の気管内挿管リスクを低減したが、死亡率やその他の転帰にはほとんどまたは全く影響を与えなかった」と結論づけている。

(小路浩史)