新型コロナウイルス下、出稽古の解禁や入場制限の緩和など徐々に以前の日常が戻りつつあった中、7月の大相撲名古屋場所は力士への感染が拡大し、緊急事態に陥った。
コロナ関連の休場は全43部屋(当時)のうち13部屋に上り、幕内力士15人が休んだ。感染者が出た部屋の全力士を千秋楽まで休場させる措置を取っていたために対象者が急増。幕下以下では、両者不戦敗の取組が出るなど、混乱が続いた。休場者が増え、閑散としていく支度部屋。大関貴景勝は「スペースがどんどん空いていくので、広く感じた」と異様な光景を振り返る。
貴景勝は「感染してもしょうがない」と腹をくくると同時に、看板力士として「優勝が決まる一番では休めない」という責任感とも闘い続けた。14日目に敗れ、自力優勝の可能性が消えた時は「千秋楽が少し気楽になった」と複雑な心境も明かす。「場所が途中で中止になるのでは」と不安を抱いた親方も少なくなく、横綱照ノ富士と貴景勝が千秋楽まで取り切った意味は大きかった。
日本相撲協会はこれまで本場所前にコロナ検査を実施してきた。感染者が出た部屋の師匠は「2週間も前に行ったからといって何の保証にもならない」と疑問を呈し、ある力士も「結局、症状が出ないと(場所中は)検査しない。支度部屋も風呂も一緒。もっと徹底した方がいい」と指摘する。
その後、相撲協会は感染者が出た部屋の全力士を休場させる措置を取りやめるなど、条件を緩和した。9月の秋場所、11月の九州場所はコロナ感染による力士の休場はなく、一息ついた格好だが、明確な出口がまだ見えない。名古屋場所の教訓を生かすのはこれからだ。 (C)時事通信社
緊急事態に「休めない」=コロナ休場相次いだ名古屋場所―大相撲クローズアップ(上)

(2022/12/17 07:08)