オーストラリア・University of SydneyのEmmanuel Stamatakis氏らは、運動の習慣がないUK Biobank参加者2万5,000例超を対象に、手首装着型の加速度計のデータと約7年の追跡期間における死亡データを解析。その結果、非常に速く歩く、階段を上るなど、日常生活の一環として行われる断続的な高強度の身体活動(vigorous intermittent lifestyle physical activity;VILPA)を1回当たり1~2分間、1日3回行った者は、行わなかった者と比べて全死亡およびがんによる死亡リスクが38~40%、心血管疾患(CVD)による死亡リスクが48~49%低かったとNat Med(2022年12月8日オンライン版)に発表した。
1日3回または4.4分で40%前後リスク低下
解析対象は、手首装着型の加速度計を7日間装着[m1] した運動の習慣がないUK Biobank参加者2万5,241例(平均年齢61.8歳、男性43.8%)。平均6.9年の追跡期間中に852例が死亡した(CVD死266例、がん死511例)。
VILPAの実施時間はほぼ全てが1回1~2分(1分以下92.3%、2分以下97.7%)で、中央値で1日当たりの実施時間が4.4分、実施頻度が3回だった。
年齢、性、生活習慣、CVDとがんの既往などを調整後の多変量解析で、1回1~2分のVILPAの頻度と死亡リスクとの間にほぼ線形の逆相関が認められた。
1日3回の頻度で1回1分以下のVILPAを行わなかった者と比べて、行った者では全死亡で39%〔ハザード比(HR)0.61、95%CI 0.50~0.74〕[m2] 、がん死亡で40%(同0.60、0.46~0.78)、CVD死亡で49%(同0.51、0.35~0.74)、それぞれリスクが低かった。同じ頻度で1回2分以下のVILPAによるリスク低下は、それぞれ38%(HR 0.62、95%CI 0.51~0.76)、38%(同0.62、0.48~0.80)、48%(同0.52、0.36~0.75)だった。
また、1回1~2分のVILPAを1日4.4分間行わなかった者と比べて、行った者では全死亡およびがん死亡リスクが26~30%、CVD死亡リスクが32~34%、それぞれ低かった。
余暇で行う運動と同等の効果
これらの死亡リスク低下効果は、運動の習慣があるUK Biobank参加者6万2,344例(平均年齢61.1歳、男性43.4%)における高強度の身体活動(vigorous physical activity;VPA)による効果とほぼ同等だった。
以上の結果から、Stamatakis氏らは「余暇活動としての運動ではない高強度の身体活動を短時間行うだけで、全死亡、がん死亡、CVD死亡リスクが大幅に低下することが示された」と結論。「40歳以上の成人の大部分は高強度の運動やスポーツを行っていない」と指摘し、「運動の習慣がない者におけるVILPAは、運動の習慣がある者におけるVPAと同様の効果をもたらすと考えられた。VILPAは習慣的に運動することが難しい者や、運動する意欲がない者における身体活動の目標になる可能性がある」と付言している。
(太田敦子)