新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株対応2価ワクチンの接種開始(9月20日)から約3カ月が経過した。国立感染症研究所感染症疫学センターの新城雄士氏らは、関東地方でオミクロン株のBA.5系統が感染例の75~90%以上を占めるとされた今年(2022年)9月20日~11月30日に、ワクチンの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症予防効果に関する症例対照研究を実施。その暫定結果から、「高程度の発症予防効果が示唆された」と発表した〔関連記事 「オミ株にワクチンは有効か、国内速報」(第三報)、「3回目接種後3カ月以内で発症予防効果65%」(第四報)〕。
関東地方の10施設、4,040人が対象
調査対象は、今年9月20日~11月30日に関東地方の医療機関10施設の発熱外来などを受診した16歳以上(一部医療機関では成人)の患者。検査前に基本属性、SARS-CoV-2ワクチン接種歴などを含む問診票の記載を求め、PCR検査の結果により陽性者を症例群、陰性者を対照群に分類した。ワクチン接種歴(接種回数および接種後の期間)により、17個のカテゴリーに分けた。
解析対象は、COVID-19発症から14日以内に37.5℃以上の発熱、全身倦怠感、悪寒、関節痛、頭痛、鼻汁、咳嗽、咽頭痛、呼吸困難感、嘔気・下痢・腹痛、嗅覚味覚障害の症状が1つ以上ある者とした。
解析は、ロジスティック回帰モデルを用いてCOVID-19発症のオッズ比(OR)を算出。調整因子として年代、性、基礎疾患の有無、職業(医療従事者かそれ以外)、医療機関、カレンダー週(月~日)、濃厚接触歴の有無、過去1カ月のSARS-CoV-2検査の有無、3カ月以上前のCOVID-19診断歴、マスクの着用状況、飲酒を伴う夕方・夜の会食への参加、今シーズン(2022~23シーズン)のインフルエンザワクチン接種の有無を組み込んだ。ワクチン有効率は(1-調整OR)×100で推定した。
4,473人を登録し、うち発症日不明または発症から15日以降に受診した者133人、mRNAワクチン以外のワクチンを接種した者30人、接種したワクチンの種類が1回でも不明の者270人を除く4,040人を解析に組み入れた。
発症予防のオッズ比は0.3程度だが、免疫減退については検討が必要
年齢中央値は36歳(範囲16〜93歳)、男性は54.3%で、24.9%がなんらかの基礎疾患を有していた。症例群は2,089人(51.7%)、対照群は1,951人(48.3%)だった。 ワクチン接種歴、接種したワクチンの種類、オミクロン株対応2価ワクチン接種から検査までの日数は表1~3の通り。
表1. ワクチン接種歴
表2. ワクチンの種類(接種歴ありのみ)
表3. オミクロン株対応2価ワクチン接種から検査までの日数
COVID-19発症の調整ORは、オミクロン株対応2価ワクチン(BA.1)接種後14日以降で0.27(95%CI 0.15~0.51)、オミクロン株対応2価ワクチン(BA.4-5)接種後14日以降で0.31 (同 0.14~0.68)だった。調整ORを基に算出したワクチン有効率は(表4)の通りだった。
表4. オミクロン株対応2価ワクチンの有効率
〔表1~4とも新型コロナワクチンの有効性を検討した症例対照研究の暫定報告(第五報)〕
新城氏らは「BA.5流行期におけるオミクロン株対応2価ワクチンのCOVID-19発症予防効果は高程度だった」と結論。また、今回の検討ではオミクロン株対応2価ワクチン接種から検査までの期間が短期間であったことから、「今後、1価ワクチンと同様に免疫の減退についての検討も重要だ」と付言した。
(編集部)