再発または難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)に対する新規ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬zanubrutinibの有効性と安全性を、第一世代BTK阻害薬イブルチニブと比べた第Ⅲ相ランダム化比較試験ALPINE。最終解析において、イブルチニブと比べてzanubrutinibは無増悪生存(PFS)を有意に改善し、心毒性などの有害な影響は少ないことが示された。詳細は米・Dana-Farber Cancer InstituteのJennifer R. Brown氏らがN Engl J Med2022年12月13日オンライン版)に報告した。

15カ国で652例を登録

 CLLの標準治療はイブルチニブだが、心房細動高血圧出血のリスクが高いことで知られる。zanubrutinibはBTKに対する選択性が高く、こうした副作用の低減に期待が寄せられていた。ALPINE試験の対象は1ライン以上の前治療歴がある再発または難治性の成人CLL/SLL患者で、15カ国で652例を登録。zanubrutinib群(160mg 1日2回投与、327例)とイブルチニブ群(420mg 1日1回投与、325例)に1:1でランダムに割り付け、病勢進行または許容できない毒性が発現するまで治療した。中間解析では、zanubrutinib群はイブルチニブ群と比べて主要評価項目である全奏効率(ORR)が有意に優れていた(J Clin Oncol 2022年11月17日オンライン版)。

進行・死亡リスクを35%抑制

 今回の最終解析における対象の年齢中央値は67歳(範囲35~90歳)で、白人が81%、アジア人が14%だった。両群の人口統計学的および臨床的背景に差はなかった。

 追跡期間中央値は29.6カ月で、イブルチニブ群と比べてzanubrutinib群ではPFSが有意に優れていた〔病勢進行または死亡のハザード比(HR)0.65、95%CI 0.49~0.86、P=0.002、)。24カ月PFSはイブルチニブ群の65.9%(95%CI 60.1~70.1%)に対してzanubrutinib群では78.4%(同73.3~82.7%)と良好だった。

図. PFS(主要評価項目)

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N Engl J Med 2022年12月13日オンライン版)

予後不良集団(17p欠失または変異、もしくは両者併存)におけるサブグループ解析でも、PFSはイブルチニブ群と比べてzanubrutinib群で延長していた(HR 0.53、95%CI 0.31~0.88)。他のサブグループにおいても、一貫してPFSはzanubrutinib群で優れていた。ORRはイブルチニブ群の74.2%に対してzanubrutinib群では83.5%だった。

心疾患・イベントもzanubrutinib群で少ない

 zanubrutinibの安全性プロファイルはイブルチニブと比べて優れ、注目すべき有害事象である治療に関連する心疾患の発現率はイブルチニブ群の29.6%に対してzanubrutinib群では21.3%と少なく、治療中止に至ったのはそれぞれ4.3%、0.3%とやはりzanubrutinib群で少なかった。新規イベントにより6例が死亡したが、いずれもイブルチニブ群だった。

 同試験は非盲検下で実施されたが、米食品医薬品局(FDA)に対する承認申請のための盲検下独立中央判定の結果も一貫してzanubrutinib群で優れていた。Brown氏らは「再発または難治性のCLLおよびSLL患者において、zanubrutinibはイブルチニブと比べPFSを有意に延長した。また、心有害事象との関連が少なかった」と結論している。

(小路浩史)