もう離さない!離れない! 目を引く紹介でふるさと納税の寄付を募る北海道様似町の返礼品「マダニ」グッズが静かな人気を呼んでいる。感染症を媒介する厄介者だが、体長約3ミリの実物をネックレスなどに仕立てた奇抜なアイデアが受け、マダニグッズによる寄付件数は2020年度以降、急増している。
 ユネスコ世界ジオパークに認定された同町の「アポイ岳」にはマダニが多く生息している。仕掛け人の一人、商工観光課の水永優紀さん(32)は、現地で採集したマダニを透明な樹脂に入れて加工し、アクセサリーにするアイデアを生み出した。
 最初は「完全に悪ふざけだった」(水永さん)が、19年にビジターセンターでネックレスを扱ったところ、用意した10個が1週間で完売。「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」などの病気を媒介し、かまれれば最悪死に至るマダニの危険性を周知するため、医師も購入したという。
 そこで町はふるさと納税の返礼品に採用。ネックレス6000円、キーホルダー8000円で寄付を募っている。「実物入り」製品は話題を呼び、マダニグッズが返礼品の寄付は、初年度の20年度の計9件から、22年度は既に30件を超えた。
 企画調整課の野里伸典参事は「厄介者のマダニだが、『離れない』というキーワードで縁起物にもなるのでは」と期待。「インパクトのある返礼品で町を覚えてもらうきっかけになれば」と話す。
 水永さんは「手作りのため多くは生産できないが、グッズを通して、アポイ岳やマダニの危険性を知ってほしい」と力を込めた。 (C)時事通信社