株式会社CureAppは12月22日に東京都で記者発表会を開き、アルコール依存症治療用アプリの有効性と安全性を検証する第Ⅲ相臨床試験を2023年1月に開始すると発表した。同社は、これまでニコチン依存症治療用アプリ、高血圧治療用アプリの2製品を実用化している。同社の宋龍平氏は「2025年〜26年の上市を目指したい」と述べた。(関連記事:「世界初の高血圧治療用アプリが販売開始」

17施設・260例が対象

 近年、軽度のアルコール依存症患者の治療において、生活習慣の行動変容を通じ飲酒量低減を目指すブリーフ・インターベンション(簡易介入)が行われるようになっている。ブリーフ・インターベンションでは、医師やメディカルスタッフによる指導の下、患者に飲酒量低減の目標を設定してもらい、1回当たり10〜15分の面接を1〜3回繰り返すという方法が取られる。登壇したケイアイクリニック(東京都)院長の堀江義則氏によると、自施設でブリーフ・インターベンションを導入したある患者では飲酒量が半分程度に減ったという。

 このような行動変容の手法を用いてアルコール依存症の治療を目指すのが、CureAppが開発を進めるアルコール依存症治療用アプリALM-003である。対象は、重篤な臓器障害がなく入院治療の必要がない軽度のアルコール依存症(飲酒量低減目標が許容されるアルコール依存症)患者。ブリーフ・インターベンションや認知行動療法を組み合わせ、アプリを通じて生活習慣の改善を促し、診察と診察の間に生じる治療の空白を埋めることができるという。

 第Ⅲ相臨床試験では、アルコール依存症を専門としない17施設で登録した260例を、医師の診療にALM-003を併用する介入群と疾病教育資料および飲酒記録機能のみのアプリを併用する対照群に1:1でランダムに割り付け、主要評価項目として12週時における多量飲酒日数のベースラインからの変化量を比較検討する。なお、多量飲酒者におけるアプリの受容性については、既に小規模試験で確認済みだという。

 宋氏は「治療用アプリの研究は世界で数多くあるが、論文を発表して終了というケースがほとんど。2025〜26年にはALM-003を医療者と患者の元に届け、アルコール依存症による死亡率を低減させたい」と展望した。

(平山茂樹)