脱毛症では、補完代替療法として食事やサプリメントを用いた介入が広く行われており、脱毛症クリニックでも受診患者の63%がサプリメントを使用しているとの報告がある。しかし、有効性と安全性は明らかでない。そこで米・Tufts University School of MedicineのLara Drake氏らは、脱毛症治療における食事・栄養介入を評価するシステマチックレビューを実施。その結果、一部のサプリメントが脱毛症に有効である可能性が示唆され、副作用はまれで軽度であったと、JAMA Dermatol2022年11月30日オンライン版)に発表した。

栄養介入研究30件をレビュー

 Drake氏らは、PRISMAガイドラインに従い、MEDLINE、EMBASE、CINAHLのデータベースを用いて、2021年10月20日までに発表された英語論文を食事療法または栄養療法と脱毛を組み合わせたキーワードで検索した。栄養不足などに起因しない脱毛を有する成人または小児を対象とする食事・栄養介入であることを適格基準とし、最終的に30件の研究を抽出した。30件のうち17件がランダム化比較試験(RCT)、11件は臨床研究、2件は症例集積研究であった。

有効性が示唆されたサプリは12種

 30件の研究で検討された20種のサプリメントのうち、最もエビデンスレベルの高い研究で評価され、有効性が示唆されたのは12種であった。

 その1つであるパンプキンシードオイルは、5α還元酵素(5AR)阻害および抗アンドロゲン作用により前立腺肥大症の治療に有効であることが示されている。男性の男性型脱毛症(AGA)患者76例を対象とした試験において、対照群と比べ有意な発毛効果と自己申告による満足度が示され、有害事象は両群で同様だった。こうした結果から、現在、日本でも男性のAGA進行遅延を適応症として承認されている5AR阻害薬フィナステリドの代替品として、パンプキンシードオイルを使用できる可能性が示唆されている。ただし、両者を比較する研究は行われていない。

 その他、有効性が示唆されたのは、海洋性蛋白質などを含むアミノ酸とビタミン類などの複合成分サプリメントであるViviscal、Nourkrin、Nutrafol、Lamdapil、Pantogar、カプサイシン+イソフラボン、抗酸化物質+ω-3脂肪酸およびω-6脂肪酸、リンゴ抽出物、シャクヤク総グルコシド+複合グリチルリチン酸タブレット、亜鉛、トコトリエノールであった。

 一方、キムチ、チョングッチャン(発酵大豆ペースト)、ビタミンD3 およびビタミンDが主成分の複合成分サプリメントであるForti5については、有効性を示唆するエビデンスレベルが低かった。

 安全性に関しては有害事象が評価された全ての治療法において、まれあるいは軽度であった。

選択には十分な注意が必要

 以上から、脱毛症患者に対する幾つかの栄養介入の安全性と有効性が示された。Drake氏らは「対象とした研究は、研究デザインの質と研究規模がかなり異なるため、それぞれの研究手法および限界に照らして解釈する必要がある」と断った上で、サプリメントの使用に際しては「現在、サプリメントは食品に分類されており、米食品医薬品局(FDA)は安全性または有効性を審査していない。しかし、一部のサプリメントが脱毛症患者にベネフィットをもたらす可能性があることから、医師と患者の双方がサプリメントにはFDAの認証がないことを認識した上で、リスクとベネフィットを確認して注意深く選択すべきである」と結論した。

 さらに、「サプリメントによる脱毛症治療の安全性と有効性をさらに検証するには、大規模なRCTが必要だ。多くのタイプの脱毛症に対し、FDAが認証した第一選択薬はフィナステリドとミノキシジルである。栄養介入は今後の研究で補完代替療法として評価されるべきである」と付言している。

宇佐美陽子