交代勤務者における代謝性疾患やがん、心血管疾患などのリスク上昇が報告される中、認知症との関連はどうなのか。中国・中山大学のHuanquan Liao氏らは、両者の関連を検討した結果をBMC Med(2022;20:484)に報告した。
認知機能障害がない労働者17万例超を解析
生活リズムの乱れなどによる健康リスクが指摘される交代勤務者では、2型糖尿病や乳がん、心筋梗塞などのリスク上昇が報告されている。加えて、睡眠障害によるアミロイドβの蓄積も報告されていることから、Liao氏らは交代勤務が認知症の危険因子の1つであるとの仮説を立て、検討を行った。
対象は、2006〜10年にUK Biobankに登録された37〜73歳の労働者17万722例。雇用者および個人事業者、認知機能障害の既往例や勤務状況に関する情報不足例などは除外した。交代勤務については、いわゆる9〜5時勤務に該当しない午後、夕方、夜間の勤務形態とした。
対象の内訳は交代勤務群2万7,450例、非交代勤務(対照)群14万3,272例で、平均年齢は順に51.8歳、52.8歳、女性は43.8%、52.3%、白人は90.9%、95.6%で、1日当たりの平均睡眠時間は7〜8時間が63.2%、71.8%と各群で最多を占めた。
交代勤務者で認知症リスク上昇、夜間とそれ以外では関連示さず
17万722例を12.4年(中央値)にわたり追跡した結果、認知症発症は716例に認められ、その内訳は交代勤務群134例(18.7%)、対照群582例(81.3%)であった。対照群に対する交代勤務群の認知症リスクを求めたところ、ハザード比(HR)は1.21(95%CI 1.00〜1.46、P=0.04)と有意に高かった。登録時の年齢、性、人種、学歴、社会経済状況を調整後もHRは1.30(95%CI 1.08〜1.58、P=0.006)で交代勤務群における認知症リスクは有意に高かった。
次に、非夜間勤務群(1万3,729例)に対する夜間勤務群(1万3,721例)の認知症発症リスクを求めた。その結果、調整後HRは1.04(95%CI 0.73〜1.47、P=0.83)と、リスクの有意な上昇は認められなかった。
さらに、認知症の病型別に非交代勤務群に対する交代勤務群の調整後HRを求めた。その結果、アルツハイマー型認知症(調整後HR 1.23、95%CI 0.90〜1.69、P=0.20)および血管性認知症(同1.46、0.94〜2.27、P=0.09)では有意差は示されなかったが、それら以外の認知症(同1.34、1.07〜1.68、P=0.01)ではリスクが有意に高かった。
以上から、Liao氏らは「交代勤務者では、非交代勤務者に比べ原因を問わない認知症発症リスクが高かった。交代勤務者においては、夜間勤務者とそれ以外の勤務者で認知症リスクに違いは示されなかった」と結論。「今回の結果は、公衆衛生における認知症予防になんらかの示唆を与えるものであるが、今後は前向き研究により交代勤務の頻度や期間の削減が認知症発症リスクの低下に寄与するかを検討する必要がある」とコメントしている。
(松浦庸夫)
変更履歴(2022年12月28日):記事の一部を修正しました