日本の正月の定番料理といえば雑煮。雑煮に欠かせないのが餅だが、毎年摂取に伴う死亡例が発生するため、餅には「新年の殺し屋」という不名誉な呼び名が与えられている。餅による気道閉塞が要注意であることは広く知られているが、消化管異物となりうることはあまり認識されていない。名手病院(和歌山県)消化器内科の川西幸貴氏らは、よくかまずに飲み込んだ餅が胃内に滞留、硬化して消化管異物化した症例に対し、内視鏡による破砕処置を行った症例報告をClin Case Rep2022; 10:e6682)に発表、注意を喚起している。

餅は胃酸で消化されるとの誤解が胃内滞留を招く

 症例は65歳女性。腹痛を主訴に受診した。腹部CT所見では、胃内に多層円弧状で高密度の物体が認められた。問診したところ雑煮に餅を数個入れ、十分にかまずに摂取したという。緊急内視鏡検査を行ったところ、摂取から5日間経過した直径30mm程度の丸餅10個が未消化の状態で胃内に残存していた。胃内温度では餅は胃液によって消化されず硬化してしまうのだ。そこで川西氏らは、内視鏡的に通電しないスナッピングで餅を10mm未満に破砕し、消化酵素配合剤(商品名エクセラーゼ)3.0g/日を処方した。2日後、内視鏡検査で餅が全て消失したこと、腹部CTでは腸内に餅の残存がないことを確認した。10mm程度の餅であれば幽門輪から十二指腸に排出され、胆汁や膵液での溶解が可能であるという。

 同氏は「餅の摂取に伴う気道閉塞は広く知られているが、未消化の餅による消化管異物についてはあまり認識されていない。餅は胃潰瘍を引き起こし、胃穿孔に至る可能性もある。したがって、消化器内科医だけでなくプライマリケア医や救急医も、こうしたまれな食物性異物の治療法について熟知しておく必要がある」と注意を促している。

編集部