肥満防止を目的とした家族向けオンライン栄養介入は、野菜・果物類の摂取量にどのような影響を及ぼすのかー。カナダ・Laval UniversityのVicky Drapeau氏らは、ランダム化比較試験(RCT)でオンライン栄養介入の有効性を検討、結果をNutr J(2022; 21: 75)に報告した。
対象は8〜16歳の肥満児がいる43家族
若年世代への健康的な食習慣の促進は、肥満および慢性疾患の予防に寄与するとされる。食習慣には家庭環境などが影響を及ぼすことから、「過去数十年にわたり、保護者や家族に特化した小児肥満防止・管理プログラムが数多く開発されてきた」とDrapeau氏ら。また、近年はオンラインなどのIT技術を用いた介入が成果を挙げているとして、同氏らは家族向けオンライン栄養介入プログラムによる野菜・果物類、乳製品の摂取量への影響を検討するRCTを実施した。
対象は、2016年2月〜17年5月にカナダ・ケベック州の小学校や栄養クリニックおよび家庭医での告知を通じて募集した43家族。①少なくとも1人は肥満(年齢に応じたBMIが85パーセンタイル以上)に該当する8〜16歳の小児がおり、②両親の体重が直近2カ月にわたり安定している、③オンライン環境が整備されているーことなどを組み入れ条件とした。
43家族を、栄養ガイドライン(GL)に基づく通常介入(対照)群19家族と、家族向けにプログラムされたオンライン栄養介入を行うNutriathlon群24家族にランダムに割り付けた。主な背景は、平均年齢が対照群は両親が40.3歳、小児が10.7歳、Nutriathlon群は順に41.8歳、11.2歳、小児の平均BMIは対照群が20.6、Nutriathlon群が20.5だった。
介入方法は、対照群は2007年に刊行されたカナダの食事ガイドに基づき、野菜・果物類の摂取量を増やすなど一般的な情報をオンラインで提供した。一方、Nutriathlon群は野菜・果物類と乳製品の摂取量および種類の増加を促すよう、個別および家族の達成目標などを含む自己決定理論に関する要素を盛り込んだプログラムを実施した。主要評価項目は、8週間のオンライン介入による野菜・果物類および乳製品摂取量の変化とした。
乳製品摂取量は家族向けオンライン介入群で有意に増加
反復測定線形混合モデルを用いて群、時間、両者の交互作用の主効果を評価し、それぞれ固定効果、個人および家族をランダム効果として含めた。解析の結果、1日当たりの野菜・果物類の摂取量に対照群、Nutriathlon群ともに有意な変化は認められなかったが、乳製品の摂取量はNutriathlon群で有意な増加が示された(群×時間の交互作用のP=0.006)。しかし、プログラム終了後3〜6カ月時の解析ではNutriathlon群における有意な増加は維持されなかった。
また、短期間の介入により副次評価項目としたBMI(zスコア)の変化については、両群で有意な低下が認められた(P=0.03)。過体重および肥満の小児に限定しても同様の結果だった。
以上から、Drapeau氏らは「一般的な栄養GLに基づく情報提供に比べ、家族向けにプログラムされたオンライン栄養介入では、乳製品の摂取量において短期的かつわずかな改善効果が示唆された」と結論。今回の介入プログラムを含む複合的な介入による長期的な検討を実施すべきとの見解を示している。
(松浦庸夫)