順天堂大学と、腸内マイクロバイオーム研究に基づいた医療技術開発・創薬を推進するベンチャー企業メタジェンセラピューティクスの共同臨床研究「活動期潰瘍性⼤腸炎患者を対象とする抗菌薬併⽤腸内細菌叢移植療法」がこのほど先進医療Bとして承認された。これを受け、順天堂大学順天堂医院は1月から腸内細菌叢移植を希望する患者および腸内細菌叢移植の便ドナーの募集を開始している。
抗菌薬で腸内をリセット後、健康な腸内細菌叢溶液を内視鏡で注⼊
抗菌薬併⽤腸内細菌叢移植(Antibiotic Fecal Microbiota Transplantation;A-FMT)療法は乱れた腸内環境を改善するため、アモキシシリン、ホスホマイシン、メトロニダゾールの3種の抗菌薬を⽤いて患者の腸内細菌叢をリセットした後、健康なドナーの便から作製した腸内細菌叢溶液を内視鏡で注⼊し、バランスの取れた腸内細菌叢を構築する医療技術。抗菌薬を事前に投与することでより効果的な腸内細菌叢移植を⽬指している(図)。
図.A-FMT療法の概要
(順天堂大学プレスリリースより)
今回の臨床研究において対象となる潰瘍性大腸炎は国内で最も患者数の多い指定難病で、腸内細菌叢の乱れが発症や増悪の要因の1つであることが明らかになってきている。同大学における潰瘍性大腸炎患者を対象とした臨床研究では、A-FMT療法後に患者の腸内細菌叢の多様性が回復したことが報告されている(Inflamm Bowel Dis 2018; 24: 2590-2598)。今後は先進医療BとしてA-FMT療法の有効性や安全性を検討し標準治療化を目指すとともに、安定した腸内細菌叢溶液の作製を可能にする腸内細菌叢バンクの体制構築にも取り組んでいくとしている。
(中原将隆)