Cochrane Reviewは2022年11月14日、1歳未満の乳児に対する保湿薬などを用いたスキンケアに湿疹の発症予防効果はなく、かえって食物アレルギーのリスクを高める可能性があるとのメタ解析結果を発表した(Cochrane Database Syst Rev 2022; 11: CD013534)。
湿疹、食物アレルギーの発症率を評価
解析対象はCochrane Skin Specialized Register、CENTRAL、MEDLINE、EMBASEに2021年7月までに公表され、湿疹や食物アレルギーがない生後37週〜1歳の乳児を対象にスキンケア介入の効果を検証した研究。個々の参加者データ(IPD)を用いてメタ解析を実施し、1〜3歳までの湿疹および食物アレルギーの累積発症率、湿疹の重症度(臨床医および保護者による評価)、湿疹発症までの期間、食物アレルゲンに対する即時反応(食後2時間以内)に関する保護者による報告、特定の食物アレルゲンに対する感受性を評価した。
研究33件・2万5,827人を抽出。研究実施地域は欧州、豪州、日本、米国で、多くが小児病院での検討だった。スキンケア介入は保湿薬の塗布、保湿薬や保湿オイルを用いた沐浴、せっけんの使用制限や入浴回数を減らす指導などで、対照はスキンケアなしまたは通常のスキンケアだった。
スキンケア介入の有用性について、さらなる研究が必要
解析の結果、乳児期のスキンケア介入は1〜3歳までの湿疹の累積発症率に影響を及ぼさないことが示された〔リスク比(RR)1.03、95%CI 0.81〜1.31、リスク差1,000人当たり+5人、95%CI −28人〜+47人、エビデンスの確実性は中等度、7件・3,075人〕。湿疹発症までの期間も同様であった〔ハザード比(HR)0.86、95%CI 0.65〜1.14、エビデンスの確実性は中等度、 9件・3,349人〕。さらに、スキンケア介入は臨床医評価による1〜3歳までの食物アレルギー発症リスクを上昇させる可能性があり(RR 1.05、95%CI 0.64〜1.71、エビデンスの確実性は低度、3件・1,794人)、わずかながら2歳時における保護者の報告に基づく食物アレルギーに対する即時反応の回数を有意に増加させることが示唆された(同1.27、1.00~1.61、エビデンスの確実性は低度、1件・1,171人)。ただし、保護者の報告に基づく食物アレルギーのリスク上昇は牛乳のみで、乳児の牛乳アレルギーは過剰に報告されるため、信頼性に乏しい可能性がある。また、スキンケアは介入期間中の皮膚感染リスクの有意な上昇も認められた〔RR 1.33、95%CI 1.01〜1.75、リスク差1,000人当たり+17人、95%CI +1例〜+38例、エビデンスの確実性は中等度〕。
レビュワーは「今回のメタ解析から、健康な乳児に対する湿疹予防目的のスキンケア介入は有効性に乏しいだけでなく、食物アレルギーのリスクを高める可能性が示された。さらに皮膚感染のリスクも高めると考えられる」と結論。ただし、「確実性が低〜中程度のエビデンスに基づく結果であり、乳幼児に対する種々のスキンケア介入が湿疹や食物アレルギーを予防するか否かについては、さらなる研究が求められる」と付言している。
(編集部)