重症好酸球性喘息患者では、経口ステロイド薬(OCS)の長期連用により副腎機能不全を呈することがある。こうした中、ステロイド依存性重症喘息患者を対象に、抗インターロイキン(IL)-5受容体の抗体ベンラリズマブの有効性を検討した第Ⅲ相b非盲検多施設共同シングルアーム試験PONENTEのOCS減量期では、ベンラリズマブの皮下投与により良好な喘息コントロールを維持したまま、OCSを減量または中止できることが示された(Lancet Respir Med 2022; 10: 47-58)。英・Royal Brompton and Harefield HospitalsのAndrew Menzies-Gow氏らは今回、同試験の維持期の結果を発表。ほとんどの患者においてOCSの減量を維持しながら、喘息コントロールの改善や副腎機能の回復が得られたとEur Respir J(2022; 60: 2103226)に報告した。
OCS減少期では63%がOCSの毎日投与を中止
ベンラリスマブは、ステロイド依存性の重症好酸球性喘息患者が対象の第Ⅲ相ランダム化比較試験ZONDAにおいて、コントロールを維持したままOCSを減量し、喘息増悪および入院を減らすことが示されている(N Engl J Med 2017; 376: 2448-2458、関連記事「抗IL-5抗体薬で重症喘息のステロイドが減少」)
PONENTE試験は、ZONDA試験を踏まえ18歳以上の重症好酸球性喘息患者598例を対象に、ベンラリズマブ投与により長期に喘息コントロールを維持しながらOCSの中立または減量が可能かを検討したもの。組み入れ条件は、①高用量の吸入ステロイド薬と長時間作用性β2拮抗薬を6カ月以上使用、②5mg/日以上のOCSを3カ月以上かつ4週間以上安定的に使用、③血中好酸球数が150/μL-1以上、または過去12カ月に300/μL-1以上であること―とした。
対象にはベンラリズマブ30mgを初回、4週後、8週後に皮下投与し、以降は8週間隔で3回投与した。OCS減量に関しては、導入期(4週間)、OCS減量期、維持期(約6カ月)を設定。導入期ではベースラインのOCS投与量を維持し、常用しているOCSがprednison/プレドニゾロン以外の場合は、同薬の経口投与に切り替えた。OCS減量期では喘息コントロールに応じたスキーマに従い、5mg/日までOCSを漸減した。
解析の結果、OCS減量期では全体の62.9%が毎日のOCS投与を中止し、喘息のコントロールが改善した。また、81.9%はOCS投与の中止または5mg/日以下(副腎機能不全の場合)を達成した。副腎機能不全の割合は、ベースラインの60%に対し、2~3カ月後は38%と減少した。
QOLが大幅に改善、32.4%が副腎機能改善
Menzies-Gow氏らは今回、OCS投与量、喘息コントロール状況、喘息増悪の持続性、副腎機能について検討した維持期の結果を報告。OCS減量期終了時にOCSを完全に中止または可能な限り低用量で維持できている患者を対象に、ベンラリズマブ30mgを8週間隔で3回皮下投与し、OCSは投与なしまたはOCS減量期に達成した最終用量で継続した。喘息増悪時にはOCSを処方し、喘息コントロール悪化時にはOCSの増量を認めた。
主な評価項目はOCSの1日投与量の変化、OCS増量までの期間、喘息管理質問票(ACQ)-6スコアおよびSt. George's呼吸質問票(SGRQ)スコアの変化、副腎機能、喘息増悪、有害事象など。副腎機能は、OCS減量期に5mg/日以下を達成した時点でコルチゾル値を測定し、副腎機能不全と評価された者は所定の間隔で再評価した。
598例のうち563例(94.1%)がOCS減量期を完遂し、維持期に移行した。解析の結果、OCS投与量の中央値は0.0mg(0.0〜40.0mg)で変化なく、増量した割合は3.2%(18例)だった。平均ACQ-6スコアはOCS減量期終了時の1.26から1.18に低下し、喘息コントロールの改善が示された。維持期終了時にコントロール良好(ACQ-6スコア0.75以下)の割合は、33.6%(201例)だった。
喘息の増悪が見られなかった割合は84.5%(476例)だった。SGRQスコアの平均値はベースラインの54.3から維持期終了時には33.4まで低下し(平均変化率-19.7、95%CI -21.7〜-17.6)、QOLの大幅な改善が示された。移行時に副腎機能不全と評価された患者の32.4%(321例中104例)で改善が認められた。有害事象は44.8%(252例)に発現し、既報と同等だった。
今回の結果について、同氏らは「ベンラリズマブを投与した重症好酸球性喘息患者の大半で、維持期においてもOCS減量の維持、喘息コントロールおよびQOLの改善、増悪の抑制、副腎機能の維持または回復が示された」と結論している。
(今手麻衣)