パーキンソン病(PD)に伴う幻覚や妄想(Parkinson's disease psychosis;PDP)といった重篤な精神症状に対する治療薬として、米国で2016年に承認されたドパミン受容体遮断作用を有しないセロトニン5-HT2A受容体逆作動薬/拮抗薬のpimavanserinが、他の非定型抗精神病薬と比べて高齢PDP患者の死亡リスクを低下させることが示された。米・RTI Health Solutions社のJ. Bradley Layton氏らが、メディケア請求データを用いた後ろ向きコホート研究の結果をDrug Saf2022年12月14日オンライン版)に発表した。

他剤と比べ全死亡リスク22%低下

 PDの主な症状は手足の振るえ(振戦)、動きが遅くなる(無動)、筋肉が硬くなる(筋強剛)など運動障害だが、幻覚や妄想などの精神症状が現れることがある。重症の場合には介護が続けられない原因になることもあり、大きな問題となっている。

 Layton氏らはメディケア請求データを用い、2016~19年に65歳以上で新規に非定型抗精神病薬の投与を開始したPDP患者2万1,975例を特定。内訳は、pimavanserin開始群が2,892例(投与開始時の平均年齢79.3歳、女性45.0%)、他の非定型抗精神病薬(クロザピン、クエチアピン、リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール)開始群(対照群)が1万9,083例だった。1:1の傾向スコアマッチングにより各群2,891例を解析に組み入れた。

 全体で1万1,147人・年(1例当たり平均0.5年、標準偏差0.58年)の追跡期間における全死亡率(100人・年当たり)は、対照群の24.1例(95%CI 21.6~26.8例)に対しpimavanserin群で18.9例(同16.9~21.1例)と低かった。対照群に対するpimavanserin群の全死亡のハザード比(HR)は0.78(95%CI 0.67~0.91)だった。

 両群の全死亡リスクを経時的に見ると、投与開始後30日間は差がなく(HR 1.00、95%CI 0.66~1.52)、投与開始後180日間で差が最大になり(同0.66、0.54~0.82)、180日を超えると差が縮小した(投与開始後1年間におけるHR 0.77、95%CI 0.64~0.91)。

施設入所者でも死亡リスク低下

 pimavanserinによる全死亡リスクの低下は性、年齢層、認知症の診断の有無で層別化したサブグループ解析でも一貫して認められた。長期療養施設または高度看護施設の入所者(各群652例)に限定した解析でも結果は同様で、pimavanserin群における全死亡のHRは0.78(95%CI 0.60~1.01)だった。

 一方、これまでのメディケア請求データを用いた研究では、対象全体ではpimavanserinによる死亡リスク低下が認められるものの、施設入所者では他薬と差がないか(Am J Psychiatry 2022; 179: 553-561)、pimavanserinによる死亡リスク上昇(Neurology 2021; 97: e1266-e1275)が報告されていた。

 この結果の相違について、Layton氏らは「われわれはPDP以外の患者への適応外使用を除外するため、精神病症状が認められた患者のみを解析に組み入れた。パーキンソン病または認知症の施設入所者や患者に対しては、抗精神病薬の適応外使用がかなりの割合に上る可能性がある」と述べ、対象の組み入れ基準の違いが一因である可能性を指摘している。

(太田敦子)