日本ではコロナ禍で鈍化したものの、外国人労働者や技能実習生の受け入れが年々増加しており、それに伴い日本で出産する外国人妊婦も増加している。日本ではこうした妊婦に対し国際基準より厳しい体重管理(増加指導)が行われているが、妥当性については明らかでない。大阪公立大学看護学研究科講師の高知恵氏らは、アジア系在留外国人妊婦および日本人妊婦における体重管理と出産転帰、新生児体重などとの関連を比較する後ろ向き研究を実施。その結果を日本国際保健医療学会雑誌(2022; 37: 179-188)に報告した。

国際基準と日本基準で出産転帰を比較

 一般的に、妊娠時に体重が大幅に増えると胎児が大きくなりやすく、出産時のリスクが上昇するため、妊婦に対しては適切な体重増加となるよう指導が行われている。国際基準である米国医学研究所(IOM)のガイドラインで推奨される体重増加値は、妊娠前のBMIが18.5未満で12.5~18kg、18.5以上25未満で11.5~16kg、25以上30未満で7~11.5kg 、30以上で5~9kgとされる。

 一方、日本では日本産科婦人科学会が分娩管理施設へのアンケートおよび、単胎妊婦約42万例の後ろ向き解析を基に策定した指針が用いられている。同指針で推奨している体重増加値は、妊娠前のBMIが 18.5未満で12~15kg、18.5以上25未満で10~13kg、25以上30未満で7~10kg、30以上で個別対応(上限5kg)と、IOMガイドラインより厳しい基準が設けられており、国内でもしばしばその妥当性が議論の対象となっている。

 高氏らは在留外国人で多数を占める中国人やベトナム人などのアジア系外国人は、日本人より妊娠中に体重が増加する傾向にあることに着目。アジア系外国人妊婦と日本人妊婦を対象にIOMまたは日本独自の指針に沿った体重管理と出産転帰の関係について検討する後ろ向き観察研究を実施した。

 解析対象は2019年9月~20年10月に国内の単一施設で出産し、組み入れ基準を満たした成人女性486例(日本人316例、アジア系外国人170例)。電子医療記録から、年齢、国籍、出産前体重、妊娠中の体重増加、分娩様式、出産時の出血量、異常出血、新生児体重などを抽出、比較した。

出産転帰、新生児体重に明らかな相違なし

 検討の結果、日本人に比べてアジア系外国人は年齢が若く(P<0.001)、初産婦の割合が多かったが(P<0.014)、周産期の健康診断や妊娠前BMIに有意差はなかった。体重の増加幅は日本人と比べ、アジア系外国人で有意に大きかった(10.4±4.2kg vs. 12.1±5.0kg、P<0.001)。

 ロジスティック回帰分析を用いて交絡因子を調整した解析では、アジア系外国人では日本の指針およびIOMガイドラインの推奨値以上の体重増加との関連が見られた〔それぞれ多変量調整オッズ比(OR)1.86、95%CI 1.23~2.81、同2.46、1.45~4.16〕。また、日本人では日本の指針およびIOMガイドラインの推奨値以下の体重増加に関連していた(それぞれ同1.55、1.03~2.32、同1.87、1.26~2.76)。

 一方、両基準に沿った体重増加と出産転帰の関連を見たところ、アジア系外国人、日本人ともに体重増加と出産時の出血量、異常出血に有意な関連はなかった。新生児体重についても両基準で明らかな相違は認められなかった。

 以上を踏まえ、高氏らは「既報から、アジア人妊婦と欧米人妊婦で体重増加傾向は異なることが示されているが、今回の研究によりアジア人の中でも異なることが示された。外国人妊婦に対する体重管理は、個々の文化的背景や食生活、体格などを考慮して行うべきである」と結論している。

(植松玲奈)