イスラエル・Tel Aviv University/Maccabi Healthcare ServicesのJoseph Azuri氏らは、米国の2型糖尿病患者を対象にグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)/グルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体作動薬チルゼパチドおよび持続性GLP-1受容体作動薬セマグルチドの有効性を検証したランダム化比較試験SURMOUNT-1およびSTEP 1のデータを用い、両薬の治療費を加味した体重減少効果を比較。その結果、セマグルチド2.4mg/週投与に比べて、チルゼパチド15mg/週投与は1%の体重減少を達成するのに必要な治療費が大幅に低く、体重減少の費用効果が高かったとDiabetes Obes Metab(2022年12月12日オンライン版)に発表した。
体重減少はチルゼパチド17.8% vs. セマグルチド12.4%
チルゼパチドおよびセマグルチドは、高用量投与により2型糖尿病患者に有意な体重減少効果をもたらすことが示されているが、これまで両薬の費用効果を比較した研究はなかった。
今回の解析対象は、SURMOUNT-1試験のチルゼパチド15mg週1回72週間投与群630例(ベースライン時の年齢44.9±12.3歳、体重105.6±22.92kg、女性67.5%)と、STEP 1試験のセマグルチド2.4mg週1回68週間投与群1,306例(同46±13歳、105.4±21.5kg、73.1%)。
主要評価項目は1%の体重減少に必要な治療費とし、米・GoodRx社が発表している2022年10月時点の薬価に投与期間を乗算して総治療費を算出した後、治療効果(平均体重減少率のプラセボ群との差)で除算して算出した。
各試験におけるプラセボ群に対する平均体重減少率は、チルゼパチド投与群で17.8%(95%CI 16.3~19.3%)、セマグルチド投与群で12.4%(同11.5~13.4%)だった。総治療費は、チルゼパチド72週間投与で1万7,527ドル、セマグルチド68週間投与で2万2,878ドルと推定された。
1%体重減少の治療費は985ドル vs. 1,845ドル
これらの結果から、1%の体重減少に必要な治療費はチルゼパチドで985ドル(95%CI 908~1,075ドル)、セマグルチドで1,845ドル(同1,707~1,989ドル)と推定された。
さらに、SURMOUNT-1試験のチルゼパチド投与群とSTEP 1試験のプラセボ群、STEP 1試験のセマグルチド投与群とSURMOUNT-1試験のプラセボ群による比較を行ったシナリオ分析でも結果は同様で、1%の体重減少に必要な治療費はチルゼパチドで984.66ドル、セマグルチドで1,845.01ドルだった。
以上の結果を踏まえ、Azuri氏らは「米国の2型糖尿病患者において、チルゼパチドはセマグルチドに比べて体重減少の費用効果が高かった」と結論。ただし、「チルゼパチドはまだデータが十分に確立されておらず、肥満治療薬としては承認されていない」と指摘し、「治療薬を選択する際には、今回の解析対象とした治療費以外に投与の方法および頻度、長期の体重減少効果、安全性プロファイルや副作用などの因子も影響を及ぼす」と付言している。
(太田敦子)