中等度以上の聴覚障害がある高齢者はない高齢者に比べて認知症リスクが6割高くなるものの、補聴器の使用により認知症リスクが低減されることが分かった。米・Johns Hopkins Bloomberg School of Public HealthのAlison R. Huang氏らは、National Health and Aging Trends Study(NHATS)のデータを用いて聴覚障害と認知症の関係を検討。その結果をJAMA2023; 329: 171-173)に報告した。

80歳以上が53.3%

 米国では、70歳以上の3分の2がなんらかの聴覚障害を有している。聴覚障害は認知症やその他の健康リスクと関連する可能性が示唆されており、聴覚障害対策への関心が高まっている。

 Huang氏らは、2011年に開始された地域在住の65歳以上のMedicare受給者を対象とした縦断研究NHATSの第11回調査(2021年)に参加した2,413例を解析した。

 主な背景は80歳以上が1,285例(53.3%)、女性が1,347例(55.8%)。非ヒスパニック系黒人が453例(18.8%)、ヒスパニック系が110例(4.6%)、非ヒスパニック系白人が1,790例(74.2%)だった。

 聴覚レベルは、良耳の4音域(500、1,000、2,000、4,000Hz)の純音聴力検査(PTA)の平均が25dBの場合を正常、26~40dBの場合を軽度の聴覚障害、40dB超の場合を中等度/重度聴覚障害と定義した。その結果、正常聴覚が674例、聴覚障害の軽度が886例、中等度/重度が853例で、聴覚障害の加重罹患率は、軽度が36.74%(95%CI 34.67~38.86%)、中等度/重度が29.79%(同27.47~32.22%)だった。中等度/重度の聴覚障害がある者は、正常、軽度の聴覚障害者に比べて年齢が高く、男性、白人が多く、教育レベルが低かった。

補聴器使用で認知症リスク3割減

 2,413例中332例が認知症を発症した。認知症の加重罹患率は全体で10.27%(95%CI 8.90~11.83%)で、聴覚レベル別に見ると、正常聴覚で6.19%(同4.31~8.80%)、軽度聴覚障害で8.93%(同6.99~11.34%)、中等度/重度聴覚障害で16.52%(同13.81~19.64%)で、聴覚障害の重症化に伴い認知症罹患率が上昇した。

 Poisson回帰モデルで年齢、性、人種・民族、教育レベル、喫煙状況、併存疾患(高血圧糖尿病、心筋梗塞、心疾患、脳卒中、肺疾患、がん)などの交絡因子を調整した結果、認知症罹患率比は正常聴覚者に対し、軽度聴覚障害者で1.08(95%CI 0.72~1.63)、中等度/重度聴覚障害者で1.61(同1.09~2.38、P=0.02)と、中等度/重度聴覚障害者で認知症リスクが有意に61%高かった(P=0.02)。

 中等度/重度の聴覚障害者853例の補聴器使用率は48.5%(414例)。加重認知症罹患率は補聴器非使用者の21.53%(95%CI 16.66~27.37 %)に対し、補聴器使用者では11.46%(同8.79~14.82%)と認知症リスクが32%低かった(調整罹患率比0.68、95% CI 0.47~1.00、P=0.05)。

 以上から、Huang氏らは「米国の高齢者を代表するサンプルを対象とした検討で、正常聴覚者に対し中等度/重度の聴覚障害者で認知症罹患率が高まることが示された」と結論。「ただし、補聴器の使用者では認知症罹患率が低かったことから、公衆衛生対策として手ごろな価格の補聴器の普及を含めた聴覚ケアへのアクセス改善およびMedicareによる補聴器とリハビリの提供を推進することが支持される」と付言している。

(大江 円)