水中や土壌に含まれ、食品添加物としても使用される硝酸エステル(nitrites)と亜硝酸塩(nitrates)。フランス・Epidemiology and Statistics Research Center-University of Paris-CitéのBernard Srour氏らは、両化合物への曝露と2型糖尿病リスクとの関連を検討。結果をPLoS Med(2023; 20: e1004149)に報告した。
15歳以上の一般住民10万例超を追跡
硝酸エステルと亜硝酸塩は自然界に広く分布し、飲料水や食事にも含まれている。さらに、加工肉をはじめ1万5,000種類以上の食品に添加物として用いられているという。これまでの実験的研究から、両化合物の摂取に関して2型糖尿病発症におけるリスクとベネフィットが報告されているが、疫学および臨床研究のデータは十分でない、とSrour氏ら。
そこで同氏らは、大規模集団を対象とした前向き研究French NutriNet-Santéを実施、硝酸エステルおよび亜硝酸塩摂取を飲料水や食事などの自然由来と食品添加物由来に分け、糖尿病発症リスクとの関連を検討した。
インターネットによる同研究の対象は、2009年以降に登録した15歳以上の一般住民10万4,168例(平均年齢42.7歳、女性79.1%)。社会経済状況、ライフスタイル、運動習慣、健康状況、食生活などについてベースラインおよび半年ごとなど定期的に情報を集めた。硝酸エステルおよび亜硝酸塩摂取は、欧州食品安全機関が定める食品分類を用い、自然(飲料水と食事)由来、食品添加物由来(亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム)、両者の総合に分けて評価した。
硝酸エステルと亜硝酸塩摂取にベネフィットなし
2型糖尿病の発症または死亡を2021年10月1日まで追跡〔平均7.3年(四分位範囲3.2〜10.1年)〕したところ、糖尿病の発症は969例で確認された。Cox比例ハザードモデルにより、硝酸エステルおよび亜硝酸塩摂取と糖尿病発症リスクとの関連を検討した。その結果、総硝酸エステル摂取量および自然由来の硝酸エステルおよび亜硝酸塩摂取量と糖尿病発症リスクに正の相関が認められた〔順に年齢、性など調整後ハザード比(aHR)第三分位 3対1=1.27、95%CI 1.04〜1.54、同1.26、1.03〜1.54、傾向性のP=0.009、0.02〕。
一方、食品添加物由来の硝酸エステル摂取および亜硝酸塩のうち硝酸ナトリウム摂取により非摂取と比べ糖尿病発症リスクが有意に上昇した(順にaHR 1.53、95%CI 1.24〜1.88、同1.54、1.26〜1.90、ともに傾向性のP<0.001)。
以上から、Srour氏らは「大規模前向きコホート研究により、硝酸エステルおよび亜硝酸塩摂取による糖尿病発症予防に対するベネフィットは立証されなかった。両化合物については多く摂取することにより糖尿病発症リスクが上昇する正の相関が示唆された」と結論。その上で、異なる集団を対象としたさらなる検討の必要性を訴えている。
(松浦庸夫)