英・University of OxfordのPeter C. Taylor氏らは、国際前向きpoint-in-time調査から関節リウマチ(RA)患者385例のデータを抽出し、RA治療において腫瘍壊死因子(TNF)α阻害薬アダリムマブ(先発品)を投与した患者と先発品から後発品に切り替えた患者の臨床転帰を比較検討した。その結果、継続群に比べ切り替え群ではRAが改善する割合が少なく、痛みが強くてQOLは低かったとRheumatol Ther(2023年1月12日オンライン版)に報告した。
欧州では約35%が後発品に切り替え
欧米では、アダリムマブの特許が失効した2016年以降、後発品7剤がRA治療薬として承認されている。患者の負担軽減や医薬品の償還制度などの理由で後発品への切り替えが進んでおり、欧州では2019年末までにアダリムマブを処方されているRA患者の約35%が先発品から後発品に切り替えたことが報告されている。
Taylor氏らは今回、2020年に欧州5カ国(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国)の医師と患者を対象に行われたpoint-in-time調査Adelphi RA Disease Specific Programm(DSP)のデータを用いて、アダリムマブ先発品の投与を継続する患者(継続群)と後発品に切り替えた患者(切り替え群)の転帰を比較検討した。
DSPから、月に3例以上RA患者を診察している医師と18歳以上のRA患者のデータを抽出。交絡因子の影響を除去するため、先発品の投与開始前に先進医療を受けていた患者は除外した。切り替え群では、先発品から後発品に切り替え後の期間は問わなかった。傾向スコアマッチングを用い、医師および患者の報告アウトカム(PRO)を両群で比較した。
医師は、治療歴や疾患活動性、治療満足度、服薬状況などの情報を患者記録用紙(PRF)に記入。患者には、自己記入患者報告用紙(PSC)の記入を依頼した。QOLはEuroQol- 5 Dimension(EQ-5D)、RAが仕事の生産性や活動障害など生活に及ぼす影響についてはWork Productivity and Activity Impairment(WPAI)で評価。また、痛みは関節リウマチ機能状態分類(HAQ)、疲労は慢性疾患治療疲労機能評価(FACIT-F)で評価した。
経済的理由による切り替えでノセボ効果か
検討の結果、リウマチ専門医303例から継続群160例、切り替え群225例、RA患者140例から継続群51例、切り替え群89例のデータを収集した。
医師の報告によると、現在のアダリムマブ治療で疾患活動性が改善した割合は、切り替え群の26%に比べ、継続群では68%と有意に多かった(P<0.001)。一方、悪化した割合はそれぞれ9%、1%と継続群で有意に少なかった(P<0.01)。患者のアドヒアランスは、切り替え群で有意に低かった(0.66 vs. 0.78、P=0.04)。RA治療薬の服薬継続率は、継続群で有意に高かった(P<0.001)。
患者の報告によると、継続群と比べ切り替え群では、健康状態が悪く痛みが強い傾向にあり、QOLは有意に低く(EQ-5D Visual Analogue Scale 71.9 vs. 62.9、P<0.001)、活動障害も大きかった(WPAI指数24.4 vs. 31.0、P=0.02)。
これらを踏まえ、Taylor氏らは「RAに関する多くの研究では後発品への切り替え後に良好な結果が示されているが、実臨床では医療的理由以外の理由でRA治療薬を後発品に切り替えると、ノセボ効果により好ましくない転帰をたどる場合がある。リウマチ専門医は経済的理由による後発品への切り替えが患者の転帰に与える影響を認識し、そうした影響を最小限に抑えるべきである」との見解を示している。
(今手麻衣)